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藤(夢)
緊急事態、大嵐(銀&森夢)
例えば、なんとなく疲れたり、なんとなく落ち込んで、少しだけ気分が優れなかったり、そういうことってあると思う。
ほんの少しの体調不良が、少しずつ心を弱くしていって、気付いたときには辛い、寂しい、そんな気持ちで溺れてる。
SOSを出したくても、大切な人に心配かけたくないから、そんなこと思っているうちに一人で静かに沈んでいく。

「ただいまぁー!」
あぁ、疲れたぁ、とため息と共に森田さんがソファーに座り込んだ。するりとネクタイを緩める手付きがすごく色っぽくて私はすごく好きだった。銀さんも後から入ってきて、森田さんの斜め前、私の隣に座った。
「おかえりなさい、コーヒーでもいれますね」
立ち上がってキッチンに向かおうとしたところを、腕を掴まれ、何事だろうと思う間もなく、そのまま私はすっぽりと銀さんの胸に収まった。
「えっと…銀さん?」
「彼女」
名前を呼ばれてぽんぽんと頭を軽く撫でられる。
「お疲れ」
はらり、と涙が零れた、一粒だけの涙は高級な生地に吸われて、顔を上げたときにはもうないはず。気付かれないように、にっこり笑って私は言う。
「どうして?銀さんや森田さんの方がお疲れさまだよ?」
「彼女」
また名前を呼ばれたけど、銀さんの表情は困ったような顔だった。
「仕事だから一緒にいられない…そのことを謝りはしないが…」
銀さんは私の目元をそっと指で拭った。
「好きな女が辛いときや泣いてるときは、傍にいてやりたいって思うのはオレも同じだ」
なんて優しいことを言うものだから。一生懸命蓋をしていた悲しい気持ちが涙になって溢れてしまう。
「ぇ、彼女?」
森田さんもわたわたして私の顔を覗くものだから、ますます涙が零れていく。
「文句の一つや二つ聞いてやるから」
「…文句なんか…ないです…」
銀さんも森田さんもお仕事大変で、大したことしてない私が疲れたとか、そんなこと、言ったらいけないと思って…でもどんどん辛く悲しくなって…しゃくりあげながら言った聞き取りにくい言葉を、二人は黙って聞いてくれた。呆れられても仕方ないと思うのに。
「彼女・・・」
「どっちの方が大変、とかじゃなくて、彼女は彼女の仕事頑張ってるだろ?だから疲れたって言ったって、悪いことじゃないって」
「あぁ、そうだな。美味しいものでも食べて、のんびりするか、な?」
二人は顔を見合わせて両頬に優しくキスを落とすのものだから、私はますます涙が止まらなかった。


『華麗からは程遠い。だが、今はこの強引さが必要なのだ。 』フレーバーテキストより

終わり

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あきゅろす。
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