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藤(夢)
JOKER<後>(銀二夢)

さぁ、笑うのはどっち。


JOKER<後>


さすがに苦笑せざるをえない。二分の一を外してしまうとは、やはり自分のツキも落ちているのだろう。彼女の表情を読んでも読みきれなかった。

「やった!銀さんも間違うとき、あるんだね!」
「・・・悪かったな」

ジョーカーが一枚、それからもう一枚。シャッフルするぞ、と言って後ろ手で二枚をかき混ぜる。それから、両方を彼女へと広げた。今のオレはさぞかし意地の悪い顔をしているのだろうと思う。

「さぁ、どっちだ?」
「銀さんの顔は見ないよ、絶対騙されるから」
「あぁ、悪党の言うことは信じないほうがいいぜ?例えばそうだな・・・オレの右手に持ってる方はジョーカーだ」

彼女は眉を寄せている。その表情がたまらなく快感だと思えるオレはイカレているのだろうか。

「うぅ、余計なこと、言わないでよ!」
「信じる信じないもお前次第さ」
「・・・わかんないよ・・・」
「二分の一さ、さぁ、時間稼ぎしないでとっとと引いちまいな?」

銀二の手の内がジョーカーがにたりと笑う。全く同じ顔が二つ、同じ顔で笑っている。

「じゃあ・・・こっち!!」

左手のカードを取って行った、オレは肩を竦めてにたりと笑って言う。

「悪党の言葉を鵜呑みにするもんじゃあないぜ?」
「嘘ーっ!」

語ったのは真実だ。ただ二枚ともジョーカーだと言わなかっただけ。残ったほうのカードと目が合う。大丈夫、次は外しやしねぇさ、お前の出番はもう来やしない。そう心の中で言いながらもう一枚のジョーカーを素早く元のカードと入れ替えた。

「ほら、あがりだ」

あっさりあがって銀二は使ったカードを山にしていった。勝利の立役者であるジョーカー二枚もこっそりしまい込む。最初に箱を手に取ったとき、取り損なって箱に残っていた一枚のジョーカー、それをこっそり取り出して持っていた。あとはばば抜きか何か、ジョーカーを効果的に使えるゲームを仕掛ければ、こちらが有利に立てる。そう考えていたのだが、上手く行った。

「さて、オレの言うこと聞いてくれるかな?」
「・・・出来ること、だからね?」
「あぁ、できるさ」

むしろお前にしかできないことだ。

「ちょ、銀さん!」

腰を抱いて抱き寄せる、焦りながら赤くなる彼女が愛しくてたまらない。制服着てるけど・・・同意の上なら犯罪じゃないよな、と頭の片隅で思う、悪党だから関係ないか。

「負けたんだから、言うこと、聞いてくれよな?」
「・・・う・・・ん」

取って喰いはしない、なんて自分に言い聞かせた言葉をあっさり反故にして、優しく彼女に口付けた。怖がらせないように、けれど逃がさないように。

「ん・・・」
「・・・彼女」

潤む瞳に紅く染まった頬。これで何もしないのは据え膳、って奴だろう。

「オレだけの物になれよ」
「・・・それがお願い?」
「いや、違うな」

苦笑して彼女の唇を指で煽るようになぞる。

「オレのお願いはさっきのキスとこの言葉を聞いて貰うことだけでいい、イエスかノーか、それは彼女次第だ」

しばらくしてから、「・・・ずるい」という言葉がぽつりと呟かれて。

「あぁ、オレはずるいんだ、知らなかったか?」

罠に絡んだ綺麗な蝶を、ようやく手に入れた、と銀二は静かに笑うのだった。



終わり

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あきゅろす。
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