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藤(夢)
JOKER<中>(銀二夢)

二人の間をジョーカーが嘲笑うかのように行き来する。


JOKER <中>


手元に残ったカードは銀二が8枚。彼女が9枚。もう日を見るより明らかだ。

「俺から引くぜ?」
「よーし、絶対負けないから!」

扇状に広げて、銀二を迎え撃つかのように意気込む。それをよく観察する、細かな変化も見逃さないように。さすがに新品なカードなだけあって傷一つ無い。

「ジョーカーに目印付いてる、なんてこと、ないよね?」
「さすがに付けてないさ」

銀二も先ほど切って滑らせたときは、まだばばぬきをするなんて思っていなかったので、あのジョーカー自体には目印なんて物はない。

けれどわかるのは。

(彼女の表情と心理が手がかりだ)

おそらく端にはまだ持ってきてないはずだ、最初から一番取りにくいところにジョーカーを置いておくのは危険すぎる。もちろん裏をかく可能性も考慮に入れてはいる。しかし、一般的には両手でしっかり持っている端の部分は心理的に取り辛い。

「じゃあ・・・そうだな・・・」

とはいえ、最初から端を狙うのは危険すぎる。こちらがどう考えているか少しでもヒントを与える気は無い。一般的に引かれそうな真ん中付近を適当に選ぶ。
揺れる右手。
動く視線。
まずは彼女を観察しなくてはいけない。
口元、瞬き、手の揺れ、その全て。
胸の奥がちりちりと焦げ付きそうだ、そう、見つめ過ぎてこのまま堕ちてしまいそう。

「これかな」

ポーカーフェイスの中、引いたのは数字札。手元の中から一枚捨てる。

「さあどうぞ」
「むむ・・・」

引かれるほうは今は気にしなくて良い。ようはこのゲーム、ジョーカーをどのようにして取らずにするか、相手からすればどのようにして取らせるか、の一点のみだ。


順調にカードが捨てられていく。途中ジョーカーを引いてしまうことがあったが、気をつけることは唯一つ。

(ラストに無条件で上がられることだけは避けなきゃな)

すなわちカードの応酬が続くうちに、ジョーカーを持っている人がもう一枚、すなわち二枚の状態で、相手が一枚のとき。この相手から引かなければならない状態、すなわち手持ちが多い人が少ない人からカードを引く状態にしてはならない。ラスト一枚を引くことになっては、自分の手の内にジョーカーが残ってゲームオーバーだ。それを避ければ、銀二は100%負けない自信があるのだから。

手の内にジョーカーが来ても、ほんの何順かですぐ向こうに送り返す。

銀二がジョーカーに手を掛けたときの彼女の口元、少し上がる口角に、違うカードを選んだときに出す赤い舌。

(・・・誘ってんのか、こいつ)

その一つ一つの仕草を、カードを看破する為とは言え、
見続けるのは精神的になかなか厳しい。

しかも。

「・・・お前何してんだ」
「だって、銀さん私のこと見てどれがジョーカーか探してるから」

手だけ突き出して、顔はそむけてる、そのくせイカサマされないようにと、横目でちらりちらりと視線を送ってくる。

(・・・喰っちまいたいじゃねぇか・・・)

「わかった、観察しないから、きちんとやんな」
「・・・ほんとかな・・・」

適当なこと言ってでも止めてもらわないと、自分自身が止まらなくなりそうだ。


「ラスト、だな」
「そう、だね」


彼女が2枚。
銀二が1枚。
銀二が手を伸ばして引く。

(二分の一、か)

右か、左か、ゆっくりと手を伸ばし、そして。






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あきゅろす。
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