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藤(夢)
2009x'mas(森田夢)
ほら、歌にもあるじゃないか。



2009x'mas
25日のサンタクロース



腕時計を恨めしげに眺めたところで、秒針は早くも遅くもならずに、ただ同じペースで時を刻み続けている。

こんな日に仕事とはついていない。

クリスマス。
恋人同士で、家族で、甘くて優しい時間を過ごす、
そんな一日。


なのに、目の前に座るはずの取引相手は来ないで。
延々待ちぼうけ。
隣には銀王様がゆったり構えて座ってらっしゃる。

まったくもってついていない。



「そんな顔すんな、仕事中だぞ」
「わかってますけど」



けど昨日も彼女と一緒に居られなかったんですよ。
わざわざ口に出さなくても、皆わかっている。
なんせ一緒に居たのは銀さんやら安田さんやら、
顔付き合わせて仕事の話をしていたのだから。


「そんなに彼女に会いたいかい」
「会いたいですよ、もちろん」


帰っていいんですか、と言外に期待を込めてみても、
「ケリがついたらな」と先回りして釘を刺される。
すごく悔しい。



「はぁ・・・」


きっと豪勢な料理を用意して手をつけずに待っている。
きっと昨日からずっと1人で待っている。
彼女はそういう人だから。

それからもしかしたら少しだけ泣いているかも知れない。
彼女は寂しがりやだから。


・・・帰りたい。
彼女が喜ぶケーキを買って。
プレゼントも用意して。

早く帰って2人で過ごしたい。


「終わったらいいもんくれてやるから我慢しな」
「いいもの、ですか?」
「あぁ、いいもの、だ。きっと喜ぶ」


銀王様の良い物は、若干怖いけれど、今はとにかく早く終わらせて。
早く彼女のところに行くこと、それだけを考えればいい。




















24日はとうに終わってしまった。
25日ももうすぐ終わる。

彼女はため息1つついて、こたつに突っ伏した。

仕方ないこととはわかっていたけれど、実際に1人で過ごすのはなかなかつらい。

窓から見えるご近所さんは電飾で家全体を飾っていて、
クリスマスを演出している。

いつもは綺麗だなと思えるそれが、今の彼女には辛かったりする。



「鉄雄・・・早く帰ってこないかなぁ・・・」



声に出して名前を呼んだら、なんだかさらに悲しくなった。
溢れた涙を誰ともなく隠すように、腕に押し付け顔を伏せる。

こたつの暖かさに人恋しさを誘惑されて、そのまま浅く眠りについた。







「・・リー・・・スマス・・・」






誰かの声が聞こえる。
いや、誰かじゃない、この声は。

待ちに待った・・・

「てつ・・お・・?」
「ただいま、 彼女」


待ちに待った・・・恋人が・・・?


「・・・なんでそんな格好してるの?」
「ははは・・・」


目の前で、サンタの格好で照れ笑いしていた。


「銀さんにもらいました」
「・・・なるほど」

一瞬で納得。
あの人ならばやりかねない。

「ずっと待たせてごめん。寂しかったろ?」
「ううん、でもおかげでサンタさんも来たし・・・ふふ、ずいぶんかっこいいサンタだ」
「・・・恥ずかしいって・・・はい、これ約束したケーキ」

目の前にはケーキの入った箱。
箱から類推すると・・・有名店だろう。
彼女の想像とおり、お店のチョイスは銀二によるものだ。

「ケーキ!中は・・・ブッシュドノエルだ!そうだ、チキンも並べなきゃ!」

ぱたぱたと走ってキッチンに行く。
と思いきやまた戻ってきて、それからぎゅっと抱きついた。

「おかえり、鉄雄、メリークリスマス」
「うん、メリークリスマス」

髪を撫でて軽く口付ければ、安心したのか、彼女はにっこり笑ってから料理を並べだしていく。

「・・・あ、脱いだらだめだよ」
「なんで?!」
「せっかくだから、ね?」

はいはい、わかりました、と半分諦めて森田は苦笑した。
それでも彼女は嬉しそうだからよしとしよう。


本当はプレゼントもあるのだけれどそれは後のお楽しみにしよう。
なんせ今自分はサンタクロースなのだから。







翌日。

「鉄雄、鉄雄、あのね、言ったらまずいかもしれないけどね・・・すごく嬉しいんだけどね」
「うん?」


「プレゼントって、24日の晩に置くんだよ?普通は」


「・・・ぇ?!」


終わり

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あきゅろす。
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