[携帯モード] [URL送信]

藤(庭)
time killer 2(赤vs森)
一体誰から聞いたんだ。いいや、そんなことはどうでもいい。これはオレのギャンブル。今度はオレが渡る番。



赤木は封筒を懐から出した。逆さに振れば何枚か紙が落ちてくる。テーブルに広がったそれを手に取ろうとして、赤木に待ったをかけられた。

「これが今回のギャンブル、やり方は至ってシンプルだ」

散らばっているのは写真だという。黄ばんでぼろぼろのものから比較的綺麗なものまで。それを裏にしたまま横一直線に並べた。若い銀二の写真もこの中だろうか、先程の条件による緊張と、それから幾分かの期待と興奮で森田の手は軽く湿っていた。

「銀二はどれか。お前はそれを当てるだけで良い」
「・・・え?そ、それだけ・・・?」
「あぁ、それだけだ」

赤木は笑ってテーブルを指でたたいた。

「ただし、条件がいくつかあるさ」
「条件・・・?」
「森田、自信はどれくらいある?」
「・・・ありますけど」

自信、か。見たことない銀二の姿。好きな人ならば見分けられる。そう言い切りたいが。赤木が仕掛けてくるぐらいだ、何かしらの罠がある。

とすれば想像できるのはこの写真に写っている人物はおそらく平井銀二だけではなく。赤木しげる、平山幸雄の両名の姿もあるに違いない。このどことなく似ている三人の全く見たことのない若い姿から銀二を確実に当てることになるのだろう。

「平山さんと、貴方の写真もあるんですね?」
「ん?」

赤木はくくっと笑った。

「察しがいいな、そのとおりだ。当然あるな」
「やっぱり・・・」

並べてあった写真を一度かき集め、赤木は自分だけ見えるように扇形に持った、そのとき。

「おっと・・・」

一枚ひらりと落ちる写真。白黒の写真で、写っている人物は・・・

「え・・・」

確信が持てる前に、赤木がさっと拾う。

「おっと、見せちまったな・・・忘れてくれ」

わざと、なのか?森田は困惑した。写っていた人物は髪が逆立っているぐらいしかわからなかった。おそらく髪の色は黒、だったと思うが、なにせ一瞬のためはっきり断言は出来ない。が。

(鋭い目つきに、あの口元・・・今のって・・・)

「さてと、この中から・・・そうだな・・・これと、これと、これ」

3枚選び出して、伏せて置いた。そして時計を見る。

「いいか、一分以内に答えを出せよ?」
「はい」
「2枚が表、1枚裏、さぁ銀二はどれだ?」
「え、ちょ、それって!!」

スタート、と言われて写真が2枚だけ表になる。そのギャンブル、オレがしたのに似てないか?!この人どこで聞いたんだ?!森田は一瞬焦った頭を急速に冷やしていく。落ち着けオレ、銀さん(と生写真)がかかってるんだから。

2枚とも白黒写真で先程落ちた写真ではない。一人は普通の髪型で白髪のよう。写真に撮られたのがわかっているのか、こちらをまっすぐに見つめてくる青年だ。もう一人はサングラスに模様の入ったスーツを着ているおそらく黒い髪を逆立てた青年。スーツは柄があり、おそらく中のシャツは濃い色だ。

(・・・サングラスで目元はわからないな・・・表情も・・・消してるみたいだし・・・)

現在の三人の様子と照らし合わせてみる。派手なスーツを着ているのは赤木と銀二。平山は意外と普通な格好をしている。ただサングラスをよくかけているのは平山だけだ。銀二がかけているのは一度も見たことがない。

「あと30秒だぞー」

それにこっちの青年の写真は随分普通の、シャツにズボンでどことなく汚れてそうだ。3人とも割合おしゃれ(と言っていいのかたまにわからなくなるぐらい奇抜な)ものを着ているから、こういう普通の格好をしていたとは考えにくい。

「これ、本当に三人だけですね?赤木さんと平山さんと・・・」
「あぁ、もちろん」

格好は決め手にはならない。ただ一人、銀二か否か、オレが見極めなきゃならないのはその一点。いくら似ているといっても何かが違う。銀二の若い頃といっても面影があるはずだ。先程一瞬見えた写真が頭を掠める。きっと、あれが銀二だ。森田は確信に近い物を持っていた。

白髪の青年は目の前の赤木だと思う。
黒髪でサングラスにスーツの青年は、平山、だろう。

「あと10秒ー9、8、7・・・」

カウントダウンが始まって森田は一つ息を吸った。不確定な物に自分の命運を託すのは、不安があるけれど。もう決めた。

「決まりました。銀さんは・・・」
「おう?」
「これです」


森田が指差したのは、伏せられたままの写真だった。

[*前へ][次へ#]

あきゅろす。
無料HPエムペ!