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藤(鉢)
誰よりも想うは汝のため(銀森)
貴方のためを想うからこそ。


誰よりも想うは汝のため


「…いい加減にしろっ…!」
「銀さんが悪いんだろ!」

安田は思わず部屋を間違えたのかと思い、ドアを閉めた。
或いは昼間から夢でも見ているのかもしれない。

よし、もう一度開けてみよう、そう決心して開けた先には。

「…勝手にしろっ!」
「ええ!勝手にさせてもらいます!さよなら銀さん!!」

おたまとエプロンを放り投げて森田がこっちに向かってくる。

(どこの昼ドラだ、これ)

安田、混乱。

「さよなら安田さん」

そう言って森田は乱暴に玄関のドアを開けて出ていく。
後には不気味な沈黙が残るばかり。
恐る恐る話し掛ける。

「…銀…さん?」
「なんだ?悪いな、余計な所を見せた」

意外とはっきりした返事が返って来てとりあえず安心した。

「なんだって仲睦ま…いや仲の良いあんたらがこんな喧嘩するんだ?」

すると、目線が指し示す。

「…何だこれ。」

覗き込んだテーブルの上に所狭しと並んでいたのは。

「…これ全部森田が作ったのか?」

トントンと煙草の箱を叩きながら、銀二が苦笑いをした。

「そうさ。全部森田が作った。」

安田が首を傾げる。

「…で、何でああなるんだ?」

森田の手料理を銀さんが喜ばない訳がない。
一体何故喧嘩をし始めたのか、安田にはさっぱり分からなかった。

「…最近忙しかったろ。」
「まぁ…確かに。最近休みらしい休みを取った記憶はないな。」
「当然、オレも森田もあまり寝てなかった。」
「ああ。…それで?」
「そんな状態でこれを作ってた。」
「…はあ。」

話を飲み込めない安田。

「料理する時間があるなら寝ろとオレは言った。」
「で、森田は?」
「外食ばかりだと体に悪い、と。」

安田がどう言ったものか、考えあぐねていると銀二が言葉を続けた。

「オレの体調なんか気にする必要はない、って言った途端食って掛かられた。
どんなに忙しくても料理はする、ってきかなくてな。あとは売り言葉に買い言葉だ。」
「………。」

それはただの痴話喧嘩じゃなかろうか、安田が心の中で呟く。

「さて、どこに行ったか。…悪いな、安田。閉めるぞ。」

安田を部屋から追い出すと、さっさと出かけてしまった。
残ったのは灰になった安田。

「…もしもし。」
「お、やっさんか?今銀さん…」
「無理だ。」
「………そうか。…飲みに行くか?」
「ああ、行く。」

やってられねえ、と安田が呟いたのは誰も知らない。







一方森田はというと。

「オレがどんな思いして作ってると思ってるんですか!」

まだ怒りが収まらないらしく、憤慨した様子で街を歩いていた。

「大体銀さんは体をもっと大事にすべきなんだ!いつも酷使して!!」

そこまで言って、森田の顔が沈む。
早く寝ろというのが選択肢として正しいだろう。
分かってはいる。
分かってはいるのだが。
それでも作りたかった。
自分を顧みない銀二の為に、何かしたかった。
結局つまらないことで喧嘩をして、あろうことか飛び出してきてしまった。
どんな顔をして帰ればいいというのだろう。
いや、今日は帰るべきではないのかもしれない。
そう考え、沿道でタクシーを呼ぼうと手を挙げた。

次の瞬間。

振り上げた手をガッと無理矢理下ろされた。

「えっ!?」
「どこに行く気だ。森田。」

後ろを振り返ると、銀二がいた。

「ぎ、銀さん!何でここに?!」
「…どこに行く気だった。」

普段に比べて、眼光が鋭くなっている。
その眼光に森田がたじろいだ。
その一方でかっこいいと思ってしまう自分がいる。

「………ったから。」

消え入りそうな声で森田が話す。

「聞こえねえ。」

森田が怯んでも、銀二は追及の手を緩めない。

「…どんな顔して帰ればいいか分からなかったからっ!!」

半ばやけくそ気味に森田が叫んだ。

「…帰るぞ。」

そう言って銀二が微笑んだ。

「でも、オレ…。」

森田が俯く。

「…行くぞ。」

何気なく森田の手を取り、歩き出す。

「え、ちょっ、ぎ、銀さん!!手、手!!」

森田の発言を無視したまま、銀二が呟く。

「…腹が減った。」
「…家帰ったら温めます!」

森田が嬉しそうに笑った。






翌日。


「…銀さんいるか?」
「安田か。入れ。」

恐る恐る安田がドアを開けて、中に入る。

「…もういいのか?」

昨日のことが気になり、銀二に尋ねる。

「あぁ。」

かなりの上機嫌でコーヒーを淹れている。

「…(森田はどうしたなんて聞ける訳がない)」
「…森田なら寝てるぞ?」

ククッと銀二が意味あり気に笑う。
オレは聞いた覚えがねえ!!
眉間に皺を寄せながら、安田は頭をかいた。






前振りを私が、残りを霧生に書いて頂いた代物ですv霧生の銀森はレアです。いいぞ、もっと書くのだ!

安田さんが仲睦まじいって言いかけているところまで私が書いた、らしい(記憶が曖昧)

ちなみに題名は霧生っちですよv(強調しておこう)

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あきゅろす。
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