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藤(鉢)
幸運を2倍以上にする方法(銀森)
午前10時。
一般的な労働者であれば、とうに出社しててもいい時間。しかし、あいにくと一般的な労働者ではないその部屋に住む二人は、まだのんびり家にいた。一人は多数取ってある新聞をコーヒー片手に読みふけり、一人は、実はまだいびきをかきながら部屋で寝ているのであった。

「おいおい、森田の奴、まだ寝てやがるのか」

部屋の主を尋ねたその人物は、勝手知ったるものとばかりに自分の分のコーヒーをちゃっかり用意していた。

「今日は用事がないからな。ガキじゃないんだ、勝手に起きてくるだろ」

そう言って男は部屋の方も男の方も見ずに新聞を読み続ける、けれど。

「あぁ、砂糖なら戸棚にしまった」
「銀さん、なんでわかった・・・」

肩をすくめて男、銀二は新聞を畳もうとする。

「わかるさ、それくらい」

ふと、今日に限っていつもは決して見ない新聞の端の方に目が留まった。

「金・・・あいつは確か・・・」
「銀さん、何か言ったか?」

砂糖を入れ終わった男、安田は銀二の傍までやってきた。彼はもちろん仕事の話をしにここに来た。けれど銀二がのんびりくつろいでいる以上は自分もそれに習うべきだ、と判断してなぜか戸棚の中の菓子まで持っている。

「いや、そうだな・・・やっぱり今日はあいつ連れていくか・・・」
「なんかあったのか?」
「気紛れだ、あいつの勉強にもなるしな」

叩き起こしてくれよ、と安田に言って、銀二は今度こそ本当に新聞を畳んだ。口元には自嘲とも苦笑とも取れるような笑みが浮かんでいたが、森田の部屋に向かった安田は気付かない。

「ま、たまにはいいよな・・・」

森田の目に留まらないうちに、新聞は捨ててしまおう、と。銀二は新聞のラックの奥へと入れた。どうせ何部もあるんだ、一部無くても気付かないし、そう律儀に全部読んではないだろうと踏んで。

「げっ!!安田さん?!」
「げっ、じゃねぇ、起きろっ!!いつまで寝てんだ、仕事だ!!」

部屋からぎゃあぎゃあ騒ぐ声が聞こえてきて、それから森田がぼさぼさの髪で慌てて起きだした。

「今日は頼むぜ?森田」
「へ?!え、だって仕事ないって言ったじゃないですか!!」
「馬鹿、こういう仕事はな、予定なんか合ってないようなもんなんだよ、大体お前はなぁ、金になる、なんて大言壮語もいい加減に・・・」

安田が説教をし始めると見るや、森田は急いで洗面所に駆け込んでいってしまった。聞こえてきた言葉は森田が最近言っていたこと。自分は銀二を越えて金になるのだと。

「まだ金、ってわけにはいかないけどな。二人でいりゃあ十分過ぎるだろ・・・」

小さく笑って銀二は支度に取り掛かるのだった。



今日の運勢

○○座
ラッキーカラー・・・ゴールド

××座
ラッキーカラー・・・シルバー


終わり。

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あきゅろす。
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