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藤(鉢)
それは甘美で極上な(銀森・パロ注意)
※Wパロ
※銀さんファンにスライディング土下座
※血液注意


干乾びた大地に何を求めるか。こんなところまで逃げてきてそこに希望を見出されるか。少なくとも、彼らを取り囲む数人の男たちはここがあの聖域という名の地獄よりはマシだと思えたのだろう。
「逃亡罪は死に値する」
淡々と黒髪の青年が彼らに告げる。金色の聖なる衣は最高位の証。それが、今自分たちの目の前に立っている、威圧感に震える足を叱咤して奮い立たせるように大声で挑発した。それは負け犬の遠吠えという類のものであるのは十分承知している。
「聖域も随分人手不足と見える!!我々のような逃亡者に黄金を差し向けるとは!」
「それも英雄殺しの黄金を!」
もともと厳しい顔付きの男はますます眉間に皺を寄せた。触れてはならないことに触れてしまった。けれども、彼は一応礼節を弁えた大人であった、少なくともそうあろうとしたので、彼らの命は数分長く延びることとなった。
「・・・戻って罰を受けるか、戻らないでオレに殺されるか」
「あるいはオレに殺されるか、だな」
不意に男がもう一人殺伐とした大地に現れた。雑兵服に身を包んだ彼らとも、青年の黄金とも違う、流れる空気を完全に異質なものにするスーツ姿。驚いたのは彼らだけではなく。
「・・・あんたね・・・なんで、そんな・・・」
「うん?朝帰り・・・いや、これでも任務帰りだ、怒んなよ」
黒髪の青年の顔に一瞬歳相応の表情が戻った、すなわち、心底呆れた、というような。対照的に楽しそうに銀髪の男は笑っている。
「呆れてるんだ・・・何もそんなスーツで・・・」
「だな、汚れないし良いかと思ったが、砂埃が酷ぇ。早く帰って一風呂浴びて、夕食にしてぇなぁ・・・」
ピッと白くて長い人差し指を彼らのうちの一人に突きつける。そう、先程英雄殺しと彼を罵った男だ。にやりと唇を吊り上げて、宣告する。
「逃げたいんだろ、いいぜ、逃がしてやるよ」
「なっ!貴様、一体何者だ」
驚いたのは彼らだけで、別段青年は驚かなかった。この後、何が起きるか分かっている。そして自分のやるべきことも分かっているからこそ、右手の指を揃えて胸の前に掲げた。
「てめぇに名乗るほど安い名前は持ち合わせてねぇ。くれてやるよ、死って言う甘美で極上の逃げを」
人差し指から光が放たれる、男を取り巻いたその光は一瞬で死神の鎌の如く、相手の命を刈り取った。血も出なければ、苦悶の表情も浮かべる間も無く、眠りにつくようなあっさりとしたそれでいて確かな死だ。崩れ落ちる仲間を見て悟った、こいつも最高位だと。
「次はどいつだ」
「く、くそぉっ」
怯えと恐怖が一人の男を突き動かした、がむしゃらに向かってくるが、青年は物ともせずに手刀を空で斬った。
「ぎゃぁぁぁっ」
見えない刃が男を襲う、ざっくりと割れた体からおびただしい血液と悲鳴が零れて、返り血があたりに飛び散った。数秒もたたずに二人も目の前で命を失い、抵抗することも出来ずにしゃがみこんだ他の仲間も、その数秒後に後を追う様に消されていくのだった。
「しっかしアレだな、相変わらずお前がやると惨殺死体ばかりだな」
「・・・」
銀髪の男が茶化しても青年はただただ自分が築いた死体の山を見続けている。これは彼なりの儀式だ。この行いが正当であったこと、それでも自分が手を下したことを胸に、脳裏に刻み付ける。
「おい」
頬に飛び散った血液を指で拭ってやれば、ようやくこちらを向いた。どことなく泣きそうな顔をしている青年の髪を綺麗な手でわしゃわしゃとかき混ぜる。本当に血に塗れているのは自分であるのに、その手はいつだって綺麗に白い。
「夕飯何食いたい?自慢の本場イタリア料理を振舞ってやるよ」
「・・・トマトソースの、パスタ」
「冗談だろ」
「もちろん」
何でも良いです、と笑った顔はもういつもと同じ表情だった。

死体の山に背を向けて楽しそうに。



終わり


蟹が銀さんだったら萌えるんじゃないかという自分の欲求に突き動かされて書いた結果がこれだよ。森田も出したいって思ったら山羊になったよ。っていうか普通に蟹山羊で良いんじゃないか。というかこれ銀さんじゃなくてもうそのまま蟹だよねっていう酷い罠。

この場合二人に命令できる教皇って誰だろう・・・?

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