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藤(学舎)
白い幽霊(赤平、没ネタ、悲恋)
あんたの泣き顔なんて、幽霊よりずっと珍しい。









「白い幽霊」(没ネタ・赤平・悲恋・死ネタ)







その学園に白髪の幽霊が出るという噂がたったのは夏を過ぎた頃だった。

「知ってるか?」
「悪戯じゃないのか?」

クラスに蔓延する噂はカイジ達の耳にも勿論届いている。

「森田、お前幽霊信じるか?」
「いや…あんまり」

零や涯も信じてないようだった。

「幽霊に関しては昔から見間違えとか、科学現象だったという例が結構あるからね」
「…見てないからなんとも」

その場にいた、平山にもカイジは聞いてみる。

「平山は見た?幽霊」
「ん?…見てはない」

何やら考え事をしているようだった。

「平山?」
「いや…うちのクラスのアカギはどうしたんだ?」

噂が立ち始めた前後からなぜか姿が見えない。
だからやはりアカギの悪戯と決めつける生徒も多い。

「アカギに用があるんだけどな…どこで何してんだか」

平山はため息をついた。
アカギの行方は一緒に住んでる赤木先生も知らないそうだ。

「そのうちひょっこり戻ってくるよ」






けれどそれから一週間してもアカギは帰って来なかった。





白髪の幽霊の噂もますます高まっていき、アカギは死んだのではないか、そういう人まででてきた。
赤木先生に言わせれば、「それは無い」だそうだが。
勿論頑なに信じない人もいる。

「幽霊なんているわけ無いだろっ!馬鹿馬鹿しいっ!」

一条はそう言いながらなぜか最近やたらとカイジの傍にいる。

「…怖いのか?」
「馬鹿な事言うなっ!!」

誰がどう見ても怖がっているようにしか見えないが。
仕方ないな、と言って追求せずに一条の傍にいるカイジもやっぱり少し怖かったりする。

「けど俺も見たぜ?」

担任の平井まで言い出した。
職員会議で遅くまで残ってたときに見たらしい。

「確かにアカギに似てなくもないが…まあこの学校の生徒に間違いはないだろうな。制服から考えると」

森田が恐る恐る聞く。

「…怖く、なかったですか?」
「いやそんなに…何て言うか誰かによく似てる気がしてな」
「ほら見てみろ!アカギに決まってる!!よく考えて見ろ!



他に白髪の学生なんてこの学校にはいないじゃないか!!」



一条は叫んだ。



そう他にいないのだ、この学園に白髪で制服を着ている人間なんて。




その時、急に外が騒がしくなった。
ざわめく声と、教室のドアが音を立てて開いたのはほぼ同時だった。

「アカギ・・・っ?!」

学生服を泥まみれにし青白い、さながら幽霊のような表情に厳しい目つきで教室を見渡す。
と、一瞬、驚いたような顔をして、視線が止まった。

「・・・まだ・・・いたのか」

それから、一瞬だけ見せたのは、悲しそうな表情だった、
しかし、それはまるで幻のように短く儚い束の間で、すぐまた元の厳しい表情へと戻っていった。

「アカギ、大丈夫かっ?」

クラスメートに心配されるのを全て聞こえてないように、ただ真っ直ぐ向かって歩く。

「っ、いてっ・・・!」

視線は外さない、平山から。
平山の腕を掴んで、強く引っ張る。
無言のまま、教室を出て行った。

「なんなんだ、一体・・・」

後に残された人達はただただ呆然と見守るだけだった。








「いい加減、放せよ!」
「・・・」
「・・・アカギ?」

アカギの様子がおかしい。
いつもは余裕の表情なのに、なぜか今日はその表情が何も無い。
なぜだか意図的に表情を消してるみたいだった。

「アカギ?」
「見つけた」

ぽつり、とアカギが呟いた。
視線をどちらからともなく外せなくなる、もうこの目を見ていたくはないのに。
瞬間、平山の背筋に悪寒が駆けて行く。


「見つけたんだ」
「・・・言うな」


聞きたくない。
聞かなくてはいけない。
相反する想いが浮かんで消えて。


「見つけたんだ」


聞いてしまいたい。
聞いてしまってはいけない。
全ての終わりがそこにある。


「だから言うなって言ってんだろ!!!」



平山が叫んだ。
精一杯アカギの胸倉を掴んで、それでもまだ視線だけは外さない。






「お前の遺体。見つけたんだ」






胸倉を掴んでいた手が、放された。
ゆっくりと降ろされていく手は、透き通るぐらい白かった。



「・・・見つけなくて良いって言おうとしたのに!お前は勝手に!!!」
「それでは駄目。曲げてはならない」

そういうアカギの目はどこまでも深く暗く。

「このままばれなかったら、俺は普通に暮らせたのに!!」
「わかっている、それでも、駄目なものは駄目なんだ」
「何が駄目だ!!俺は、俺は・・・っ!!」




死にたくなんかなかったんだっ・・・!!




平山の黒い髪が白へと変わる。
それを思わずそっと撫でた。

恐怖のためなのだろうか、彼の遺体の髪は真っ白に染まっていた。


「お揃いだ」
「ははっ、ばっかじゃないのか」
「意外と似合ってる」
「黙れよ」


そのままアカギは平山を抱き寄せた。

昼は以前のままの黒髪で、
夜は白髪で、ただただアカギと一緒にいたかったのに。

当の本人は行方知らずと来た。


「まだ半分だ」
「・・・何が」
「お前を殺した奴を見つけてやる、必ず」


別にどうでもいいや、実際俺もよくわかんねぇし、平山はアカギの耳にそっと囁いた。


「お前と一緒にいられねぇんだったら、意味ねぇんだよ。
・・・大体、俺が幽霊でいる間にどうして一緒に過ごしてくれなかったんだ、いじわるだな、ほんと」
「それじゃあお前が浮かばれないだろ」


最初に白髪の幽霊を見かけたのはアカギだった。
まるで自分のようだと思ったけれど、それは確かに平山だった。

だから。

ずっと探していた、彼が本当にいる場所を。


「なぁ、アカギ、結局俺のことどう思ってるかぐらい聞かせてくれよ」
「凡夫」

なっ!!カチンと平山は来て、アカギを突き放した。
が。
思わず目を見張る。

「凡夫だろ、勝手に先に逝きやがって」
「お前・・・」





きっと幽霊よりも珍しい、アカギが泣くなんてな。




















<後書き>


平山「ってちょっと待てぇぇぇぇぇぇぇ!!!!!!!!これのどこが幸せ平山計画なんだぁ!!」
和也「作者としては、アカギに愛されてるからいいってわけよ」
平山「前提として俺可哀相過ぎるだろ?!」
和也「出番の無い俺のほうが可哀相よ?だから最初に没ネタって書いてあんだろ、よく見てみろよ」
平山「没でも何でもしるか!!!ふざけるな!!!大体あの鬼畜ドSが泣くもんか」
アカギ「・・・(目薬を持ってにやりと笑う)」
平山「なっ・・・!!そんなオチかこのやろう!!!」


というわけで、平山さんは自毛か否かで出来たとんでも話でした。
普段の学園パラレルとはなんにも関係ない(ハズ)ですので、ご了承下さい。


平山「今度はもっと真っ当な幸せ俺計画書けよ」


アカギさんに聞いてください。以上。


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あきゅろす。
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