[携帯モード] [URL送信]

ありがとう
第4話
───ガヤガヤ

教室はざわついていた
もちろん、昨日のあのNEWSの話でだった

「あそこの揚げパン、
 おいしかったのになー」

「だなー、俺週1は行ってた」

「めっちゃ悲しいー」

・・・・そんなの、私だって同じ
あそこの揚げパンは私の大好物だったし、
何より、
揚げパン屋のおじさんは優しくて
私の大好きな人だった

4日に1度は拓と一緒に行ってた
大好きな人と、大好きな物を食べに行く・・
もうそんなことが、できなくなっちゃうんだ・・
拓と・・・

ってあれ

拓がいない

風邪でも引いたのかな・・?

ガラッ

教室のドアが開き、先生が入ってきた

「皆さん、席についてください
 朝学活をはじめます」

先生の声は、
いつもの若々しい声とは違って、
少しトーンの落ちた、どこか寂しそうな声だった

先生の言葉を聞くと
今までざわついていた教室が
静まり返り、みんな席に着いた

「起立、礼
 おはようございます
 着席」

みんながいすに座り、先生に視線が集まる

「はい、おはようございます
みんなもう知ってるみたいね
よくこの学校に来てくれていた鴨井さんが
事故でお亡くなりになられました
ほら、揚げパン屋さん
あれが食べれなくなると思うと、寂しいわね」

先生は、みんなが心配している気持ちを悟って
NEWSの事を、できるだけ
暗くは話さなかった

「それと・・・もう1つ、
 今日お休みの野本君
 昨日、夕方暗くなってきたころ
 川沿いでランニングをしていて、
 その時に誤って足を滑らせて
 3M下に落ちてしまって
 左足骨折、右腕を捻挫してしまったと・・・・」

───ザワッ

教室が再びざわついた

拓が入院・・・?

「でも、右腕は1週間ぐらいで完治するらしいので
 右腕が直り次第、学校にはくるそうです」

緊張がほぐれたように、
みんなはほっとする

「他に連絡はありますか?
 ・・・では、朝学活を終わります」

・・・そんな
おじさんに続いて拓まで・・
どうかしちゃったのかな・・・

「美優ー!!」

話しかけてきたのは、
咲だった

「あ、はーい」

気力なしに返事をする

「・・美優、顔真っ青」

「え・・うそ」

とっさに両手で顔を覆う

「ほんと。余裕ないの丸見えだよ
 どーかしたの?」

咲が美優の顔をのぞきこむ

「・・あ、ううん
 なんでもないよ」

美優は、弱々ながらも
咲に笑顔を見せる

「そー? あんま無理しないでね
 いつでも話し聞くから」

咲の言葉を聴いて
肩の荷が下りたように、美優はほっとする

「・・ん、ありがと
 そーするよ」

咲は、美優ににっこりと微笑むと、
自分の席に戻った

・・・・そっか
もしまたなんかあったら
咲に相談すればいいんだよね
きっと咲なら聞いてくれる

そう思うと・・落ち着いてきた

美優の真っ青だった顔は、
だんだん肌色に戻っていった

──キーンコーンカーンコーン──


[←前へ*][次へ→#]

4/8ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
無料HPエムペ!