ありがとう 第3話 「美優ー、テレビばっか見てないで手伝ってー」 「あーい」 帰ってきた後ずっと制服のまま テレビを見ていた美優は、 部屋に行き、スウェットに着替えて戻ってきた 「今日はどこ行ってたの?」 お母さんがフライパンで炒め物をしながら美優に聞く 「んー。友達と揚げパン食べに行ってた」 流しにたまっている食器を洗いながら 美優が答える 「揚げパン屋ってあの、かも揚げパンの?」 「そーそー」 「えー、お母さんが好きなの知ってるくせに お母さんの分買ってきてくれなかったのー?」 「くれないくれない。そこまで頭回んなかったし」 カモ揚げパン、そう あの坂の上のおじさんの揚げパン屋は 結構有名で地元じゃ知らない人はいない 子供からお年寄りまで大人気なのだ お年寄りには坂を登るのはきついから 50歳以上限定の宅配も行っている 優しいおじさんなのだ 「次行ったとき買ってきてねー」 「覚えてたらねー」 お皿を洗い終えた美優はソファにすわり、 リモコンを手にとって電源を入れる 『次のNEWSです 午後8時過ぎ東京都○市のとある道路で 軽自動車と大型トラックの 衝突事故がありました』 「うわー、衝突事故かー;;」 美優はリモコンをおいて テレビを見る 『死亡者は軽自動車を運転していた 鴨井義信さん、51歳、男性 地元でも有名なかも揚げパンを営んでいた方で 商品の宅配の帰りにトラックが衝突し───』 ─────え かも揚げパン・・・て 揚げパン屋って・・・ うそ うそうそうそ おじさん・・・? 「あら・・・・」 リビングはTVのアナウンサーの声だけが ただただ響いていた [←前へ*][次へ→#] [戻る] |