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あと 15 秒



軋む手の節、張りつめた筋。

全身全霊をかけて綱を握りしめ堪えているのに、中央に結わえ付けられた赤いハチマキは、じわりわりと相手に引き込まれつつあった。





「ルルーシュ〜! もう無理ーーーー!」





足の裏は既に地面から浮きかけている。
勝敗を判断するそのハチマキもろとろも、相手側に自分の身体が飛び込んでいってしまいそうだった。

どうにもこうにもならないと、私は背後の彼に悲鳴を上げ、苦しげな返事が返ってくる。





「ぐうっ……我慢しろ、先頭のお前が諦めたらそこで試合終了なんだッ、せめてつま先で踏ん張っておけ!」

「とは言っても、もう握力腕力気力三つ揃って限界なんですけど!……ぬぬぅ……。
大体、やっぱり生徒会が全体力で運動部に勝とうだなんて無理だったんだのよッ!」





綱引きの種目は、勝った回数で点数が決められる。

まずトーナメント式に文化部ブロックと運動部ブロックに分かれ、各ブロックを勝ち上がってきたチームが優勝決定戦を戦う、と言う仕組みだ。
勿論優勝チームにはボーナスポイントが与えられる。

我らが生徒会はつつがなく文化部相手では勝ち上がってきたものの、決勝で対峙したラグビー部とは一筋縄でいく訳もない。

と言うよりむしろ、現在瞬殺されずにギリギリ勝負になっているだけめっけもんである。





「あと……十五秒我慢しろ! そう……したら、必ず勝てる!」





とか言うルルーシュも、もう虫の息なんですけど。
まるで説得力がない。





「どこにそんな根拠があるんだぁ! ……うわ、っ」





ぐらりと上体が崩れ、支えるために結局右足が前に出た。
もう一センチでも動いたら、ハチマキは決勝のラインを越えてしまうだろう。





「俺を信じろ! お前なら、できる!」

「そ、そんなことっ、言われたって……」





苦し紛れに後ろを振り返ると、そこにあったのはルルーシュのアメジストの瞳。


眩しくて恥ずかしくなってしまう位真っ直ぐに、見つめられていた。





「お前なら、できる」





息は乱しているけれど、ひたむきな強い芯を持つその眼差し。
美しい紫の中には、諦めの色なんて微塵も溶けていなかった。
本気で逆転を信じ、しようとしている、まるで革命家の目。





「〜〜〜〜〜〜ッ、ああ、もうッ」





腹を決めて前に向き直る。


自分を鞭撻して、もう動くまいと両の足に一層の力を込めた。

ルルーシュが言うんだ。きっと、あと十五秒ぐらいに、何らかの策があるのだろう。
それを信じてやろうじゃないか。
文字通り歯を食いしばり、あと一歩を決めようとしている相手に精一杯食い下がる。





「……っ、ルルーシュ、これで、負けたら、何か奢ってよね……っ」

「ああ、勿論だ。何でも好きなもの奢ってやる」

「ううっ……」

「……負けたら、な。――スザクゥッッッッ!」

「――イエス・ユア・マジェスティ!」

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あきゅろす。
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