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あなたを して? 



お次は、障害物競走。
パン食いはリヴァル、アメ食いはルルーシュ、二人三脚はシャーリーと会長。スザクは早着替え、カレンはハードル、ニーナはぐるぐるバット。
そして私は最後の借り人。



パン食いアメ食いの二人はいいとして、足を繋がれたシャーリー達の絶妙のコンビネーション、スザクがくじ運を発揮し職権乱用気味の似非パイロットスーツへの超絶チェンジ、さっきの徒競走で病気が吹っ飛んだのかハードルを薙ぎ倒す程に跳びまくったカレン。



彼らの活躍で、ニーナが脳神経の接続を乱され、「ユーフェミア様が見える……」何てぼやきながらコースを外れそうになったアクシデントはあったものの、どうにか首尾よく三番手で私の所までバトンが回ってきた。



そしてコース上に落ちていたくじを引き、そこに合った借り人の条件に合致するであろう人物――ルルーシュを、血眼になって探していた。



「あ、いたいたいたいた!! ルルーシューーーーッ!!」



ルルーシュはもう自分の役目は終わったと言わんばかりに、鷹揚と日陰で顔をタオルで拭いている。



「ん、何だ? もう障害物は終わったのか? とりあえず、まだ顔の小麦粉を払ってないんだ。ちょっと待ってくれ」

「駄目駄目駄目駄目、借り人がまだ残ってるの! 借りるよ!」

「う、うわわあぁっ、ひ、引っ張るな!! ちょ、ちょっと待て!! 名前! せめて小麦粉を……ッ」



嫌がるルルーシュの手首を鷲掴みにし、嫌がる獲物を巣に持ち帰るようにして、強引にゴールまで持って行く。





借り人のお題は例年、割と無茶苦茶なものが多いらしい。朝ご飯にハムエッグを食べた人だとか、数学で赤点を取ったことがある人だとか、ハイヒールにフェチとして魅力を感じる人だとか。
そんな、いちいち聞き回らないといけないメンドクサイお題であるという。



そしてもう一つ。『今自分の好きな人』と書かれたくじが必ず一枚紛れ込んでいると、まことしやかに囁かれているのだ。
何とハズカシイ。そんなもん拾ったら、私は闘わずして戦略的撤退を選ぶだろう。考えた人は、何と厚顔無恥な不埒者だろう。恥を知って然るべきだ。



それが唯一の不安要素だったけれど、どうにか私は一発で借りるべき人が思い浮かぶようなお題だったから、もしかして一位が取れるんじゃないかと懸命に駆けていた。





案の定ゴール前にはまだ誰もいなかった。
しかし、残り五十メートルと言ったところでいきなり前から卓球部の青いジャージの二人がコースに踊り出る。



「……くッ、負けるもんかぁ!」





疲れて硬化しつつある足の筋肉を鞭打ち、ラストスパートをかけた。



距離は狭まる。どうにか、目と鼻の先。いける。いける。――と、思ってもやはり、



「……はぁっ、はぁっ、も、もう息が……足が……はぁ……」





――後ろの人がもやしっこでは。





結局、一位は男女二人連れの卓球部。





「あーあ。二位かぁ。ルルーシュが力尽きちゃったせいで」

「う――るさい。突然すぎたんだあれは……。ば、万全の……コンディションじゃなかった」

「はいはい。大丈夫? ドリンク飲む?」

「ああ……。……ふぅ。それより、聞きたいことがある」

「何?」



突然ルルーシュは、まじめ腐った顔をした。
自分の身の安全のため優勝に本気になった時とは、また別の種類の真剣さ。
アメジストの瞳が私を見据える。
瞳の奥には私が映る。
まだ、その顔には小麦粉ついているけれど。



「……っ、その、何でいの一番に俺だと決めて、俺を借りに来た?」

「そりゃぁ、勿論ルルーシュが条件にピッタシ当てはまってたから」

「そ……そうか……い、いやっ、そのっ、俺が聞きたいのはそんな事じゃなくて……その……」



私から視線を外して、ルルーシュは頬をほんわりと色づかせた。
どうしたんだろう。息を切らしたと思えば真面目になって、今度は頬を赤く染めて。お次は呂律怪しく語尾をやたら濁らせて。
熱中症かな。それとも思春期特有の情緒不安定かな。



「く、くじには何て書いてあったんだ?」

「ふふふ、見たい? きっとあてはまりすぎて吃驚するよー」

「いやいやいやいやッ! いや……その……その前に……言いたいことが……」

「あ、ちょっと待って……確か……どこにやったかな……」

「その、だな。もし、俺が……同じ、くじを引いてたら、俺も……お前を……名前、」

「あったあった! はい、これ!」

「――ッ!?」



ポケットの底に沈んで折り畳まれていたくじを取り出し、ばっとルルーシュの目の前に翻す。
その瞬間、彼の顔に咲いていた桃色は、いきなり静粛として花が闇に沈んだようになった。
そして土気色と見まごうばかりに血の気が引いていく。数秒の間、人形に等しくルルーシュは瞬きもしなくなった。



「……ねぇ、どうしたのルルーシュ、やっぱり具合悪い? 熱中症とか……」
 
「〜〜〜〜〜〜ッ」



しばらくすると、今度は煮えたぎったマグマを思わせる真紅が、ルルーシュの全身に咲き乱れた。
ジョークの一つにある電子レンジに入れられた猫もかくや、と思える程目を白黒させて、ギャグマンガよろしく頭から湯気を噴き出しそうな沸騰ぶりだった。



「え、ちょっと、やっぱり熱があるんでしょ!?」

「何でもない!! 何でも!! ああ、もうお前あっちへ行ってろ!! 俺は疲れた! 用事を思い出した!」

「ま、待ってよルルーシュ! チアガール以前に倒れたら元も子もないんだよ!? ルルーシューーー!」

「た、確かキャプテン・●ラボーと修行の約束が! それからモンテ・●リスト伯爵の別荘に遊びに行く予定が!!」

「ねぇ、それ何の話!? どこの世界での話!? 錯乱してない!?」



『シスコンの人』



くじにはそう書かれていたのである。
あまりにも本質を突かれすぎていたため、逆に怒ったのだろうか。
結局、わからず終いだった。






*声優ネタすいません。

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