大玉転がしナイトメアver
神聖ブリタニア帝国の象徴、と言えばやはりこれに尽きるだろう。
圧倒的な科学技術・軍事力の結晶、ナイトメアフレームだ。
「すごいですね会長、どこから持ってきたんですか?」
「レンタルよ、レンタル。民間に払い下げられたスクラップ寸前のものを……でも、たまにはこういうブリタニアらしいものもないとねぇ。
廃棄もこちらでする、って言ったら、予想外に安くしてくれて、いっぱい借りて来ちゃった。だから、今回も一般参加OK!」
競技場のトラックににずらりと並んだグラスゴー、そしてアッシュフォード家所有のガニメデ。
おそらく今回、一番規模が大きくかつコストを消費したのが、このナイトメアで大玉転がしリレーだろう。
勿論、ミレイ会長の思いつきである。「ただ転がすだけなら面白く無いじゃない!」の一声で。
彼女は、ないすばでぃの愛すべき我らが生徒会長である。
しかし彼女のやっかいな点は、そんな突拍子のない思いつきを実行するだけの行動力も、(学園限定での)権力も、そこそこの財力も、実現のために奔走せざる得ない生徒会メンバーも、全て揃っているということであった。
それがまた、アッシュフォード学園の面白い所でもあるのだが。
「でも、一台だけガニメデって……今のナイトメアとは大分仕様が違うんですよね、公平性を欠きませんか」
そう指摘するスザクの口調は、ちょっとだけ元気が無さそうだった。
ナイトメアの操縦と言えば軍人である彼の本業、例え綱引きの時にかけられた出場制限が無くても、スザクはもとよりこの競技には出られないから、だろう。
「うん、だからね、スザク君。ガニメデは希望者がいなければただのお飾りにしておこうかなーなんて思ったんだけど。
でも『どうしても乗って参加したい』っていう人がいたもんだから」
「へぇ、一体誰です?」
「何か匿名希望で……あ、一般の人なんだけどね。まぁ、余らせるのもアレだしいいかなー、って思って」
いっぱんのひと?
いやな予感がする。
「じゃ、みんな早く位置について! ほらほら、スザク君も」
「え、僕も出ていいんですかっ!?」
「うふふ、ナイトメアの操縦には特別ルールアリだから。二人一組よ。はい、これ持って行ってね」
「?」
と、スザクと一緒に渡されたのは、馬鹿でかい羽織。
その使い道は不明のまま、私は相方のルルーシュの所に向かった。
「遅いぞ! 第一走者なのに、間に合わないかと思ったぞ。早く乗れ」
「ごめんごめん。……うわー、すごい、ナイトメアってこんなに高いんだね。そういえば、会長から羽織を預かってきたんだけど……何に使うの?」
「ああ、これか。これはだな……まず俺が着て……」
「うん」
「お前が着る」
「は!?」
LLサイズをゆうに超える羽織の中に、ばふりと引き込まれてしまった。
ルルーシュの姿は私の背中の後ろにすっぽりと隠れて、ただ袖から通った細い手が見えるだけ。
「ええ!? 何この密着具合!? 熱いよう!」
「俺もさっき聞いたばかりだが……。ナイトメアの操縦は、二人一組で、しかも二人羽織らしい」
「うそぅ!?
ああ、だからスザクも出られたんだ……って、ああもうまたミレイ会長変なことを思いついてッ!」
「とにかく、お前は頑張って俺の目になれ。計算では、三位以内に入れば、最後のスウェーデンリレーでギリギリ逆転が狙える」
「そんなこと言ったって……!?」
事故でも起こったらどうするつもりなんだろう、と慌てている間もなく、競技開始のピストルが鳴った。
「わ、わ、わ、ルルーシュスピード出し過ぎ! ぶつかるってば、そこ曲がらないといけないんだってば! ぎゃー!」
生きて帰ってこれるか不安です。
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