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騎馬戦に
皆の目が、あれ、こいつも跳ぶんだ、という意外さに見開く。
しかし、跳躍は目に見えて足りないことは一目瞭然だった。
だってやっぱり、一瞬みんなの力で真上に僅かに飛び上がっただけ。
水平方向には30センチも跳んでない。

ああもう、このまま落ちるだけかなぁ――だがしかし、足の裏にあったのは土の感触ではなかった。





(――出来ることは、あった!?)







囲いの最前列のチームらが、こちらに肉薄しすぎていたことが幸いだった。
偶然にも足が下りたのは美術部チームの馬。その正面をつくる人の肩を踏み締めて、無我夢中でその騎手にしがみついてしまう。
すると、握ったのは悲鳴を上げる相手の帽子。
思わず引き抜いた。
いとも簡単にすぽんと相手の頭から離れる。

やったぁ。
一個もぎ取ったり。





おおっ、これ実はいけるんじゃないか? ちょっと嬉しくなる。
人間諦めなければ意外に出来るものなんですね! 
ちょっと反則くさいけど。




と、少し調子づいてまた別のチームに飛び移る。
案外簡単にいった。
よし、このまま帽子を奪いつつ、包囲網を渡って渡って、ルルーシュ達の所までたどり着こう。
相手が呆気に取られている間にまた帽子を奪う。



だがしかし、次の馬へ踏み出そうとした瞬間、密集した囲いが一斉に崩れた。

危機を感じた他チーム達が、一気に離散して散り散りになった。
一度詰められた馬と馬との距離が一気に開く。






勿論私は、今度こそ足場も何もなくなって、地面に落っこちるしかないわけで!










「ぁ、う、わああああああ!?」








飛び降りてしまったのはたいした高さではない、けれども着地の瞬間、やはり目をつぶってしまう。
スカイダイビングのように手足をばたつかせる間もなく、正面から顔面から地面にダイブする。

ぼん、と衝撃音、一瞬意識が反転した。
けれども、あれ、痛いには痛いけど予想したほどでもない?
ていうか地面ってこんなに柔らかかったっけ。
恐る恐る目を開けてみると、顔を埋めていたのは真っ白いTシャツだった。






「……ルルー、シュ? 何やってんの」





身体の下になっていたのは、私の代わりに土まみれになったルルーシュ。






「……どこに跳んでも受け止めてやる、って言っただろ」

「……そんなこと言ったって……私をほっぽりだしておいて、今更助けに来る奴があるかあ!!」






本当に今更すぎる、一人で頑張ってたのに!
という怒りを込めて、落下のクッションになってくれたルルーシュを馬乗りにしたまま、その頭をぼこすこぼこすこ叩いた。





半分照れ隠しだったのは、秘密。






「痛い! 重い! 折角慌てて囲いの外から走って来てやったのに、その態度は何だ!」

「知らない! 別にルルーシュなんて、来てくれなくたってよかったし!」

「……な! 怪我でもしたら大変なことになっていただろうがッ!」

「だったら、そんな作戦を私に押し付けるルルーシュが一番悪いじゃないの!!」





生徒会チームが脱落しても、混戦する騎馬戦の片隅で、繰り広げられる取っ組み合い。


むしろ観客の視線は、はこっちに集中していたとか。会長いわく、「史上最大の痴話喧嘩」だったらしい。


恥ずかしいったらない!

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