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騎馬戦いち
ルルーシュと、リヴァル、そしてスザクの騎馬に担ぎ上げられ、いつもの約二倍になった目線を楽しむ余裕なんてなく、私はすっかり青ざめていた。





見回せば、怖い! なんか回りの視線が、怖い!

四方八方眼光は炯炯、鈍く光って騎馬戦開始の合図を待ち構えている。
虎が爪と牙を研いでいるような不気味な沈黙と息遣いがあった。

何を隠そう、陸上部、ラグビー部、馬術部、水泳部、化学部その他諸々全ての部活に、生徒会は狙われているのだった。









騎馬戦のルールその一。
騎手が被っている帽子を取られたら負け。

その二。
点数は奪取した帽子の点数による。

その三。
騎手が、馬から落ちて地についたらその時点で失格とする。










特に、点数の入り方が重要だ。
攻撃あるのみ、逃げているだけでは得点にならないということ。
最後まで生き残れなくても、他のチームの帽子を奪取してしまえば、大量得点のチャンスはある。
しかし裏を返せば、一つも取れないうちにやられてしまえば無得点のままに終わることもある。





現在生徒会は(ルルーシュの悪知恵とも言う)予想外の頑張りを見せて二位に浮上。

そりゃあ面白くありませんよね、現役運動部の方々にとっては!

さらにはもし生徒会が優勝してしまったならば、生徒会メンバーを優勝チームが一日いいように使うなんていう企画は立ち消えになってしまう。





だからこそ、ここで一致団結して生徒会を集中攻撃し、無得点に押さえ込んでやろう、という謎の協定が結ばれているらしい。
どこからともなくニーナがそんな情報を仕入れて来た。





しかし、一番慌てるであろうルルーシュはどこ吹く風で、「へぇ、そりゃあご苦労なことだ」とさらり、流すばかりだった。








「ルルーシュのことだから、何か策はあるんだろうとは思ったけどね、騎手はスザクってことだったし。
第一ラウンドが開始した直後に、一斉に囲まれて、どうなることかと思ったけど……」



私は、スザクにおぶさりながら、右足を支えてくれているルルーシュに言った。




「お前も、まさかあそこから、スザクが跳ぶとは思わなかっただろ? 体力バカのスザクなら、人垣を飛び越えることぐらいわけないさ。
他の奴らが宙を舞うスザクに気を取られている間に、馬はすかさず一人一人に分離して、奴らの群れをかき分け、背後に向かい、そこで再び馬を組む。
そしてスザクを受け止める。
無事に包囲網を突破して、そうしたら、あとは振り向かれる前に帽子を取れるだけ取ってしまえばいい。
騎手は地に落ちてはいないから、失格にはならないだろう?」

「うんまぁ。素晴らしい大逆転劇だったね。スポーツマンガでもびっくりだよ。そうそうないよ。……でもさぁ」













そんなびっくり人間にしかやれない作戦、私に求めるのは無理があるんじゃないかな!











スザクは、例の出場制限で、二回目も騎手には出られないときた。
今度はルルーシュがやるんだろうなぁ、と思っていたら、「出番だ!」といきなり御指名が来たのはなんと私。





「一見弱そうなお前が二番手だったら、相手も油断して同じ作戦で来るだろうからな。
だから、こっちもまったく同じ手でいく。
頑張って跳んでくれよな」

「いやいや。あれはむしろスザクにしか出来ない作戦でしょう! 皇帝陛下が『人ぉはぁ、平等ではないぃ』って宣ったじゃないですか! 
私にスザク並の身体能力なんてありません! 
無理無理無理無理」

「つべこべ言うな。あと俺の前であの男の話を出すな。
出来る出来ないじゃなく、お前しかいないんだ、お前しか……」

「それってどーいう……」

「……そこそこに度胸があって、男三人で担ぎあげても平然としていられるぐらい、体型に魅力がない奴がお前しか……」

「な……! そりゃあ会長とかシャーリーに比べたら貧相かもしれませんけどね!」

「ほら始まるぞ、静かにしろ」

「う……」

「安心しろ、お前がどこに跳んできても受け止めてやるから。全力で跳べ」









だから、それ以前に、私の脆弱な脚力では10センチも跳べない危険性があるのですが。









かくして始まる騎馬戦二回戦、連合軍は性懲りもなくまた生徒会チームを囲みに来た。





「うわ、暴力反対! 暴力じゃないけど……むしろ、集団いじめ? あ、いや、こっちこないで!」





数十ほどの馬と騎手が、一つの目的を持ってうごめく。
標的は生徒会ただ一つ、しかも全員目が据わってるんだもの、こんな非人道的なことを真面目にやっているんだもの、これ程の恐怖はなかった。

生徒会の馬は、まるで蚕の塊に投げ込まれた一枚の葉っぱみたいだった。
距離はあっという間になくなっていく。



退路を絶たれ、後ずさり、楕円を描いて詰め寄られた。
じりじり迫る連合軍の囲いは目と鼻の先。背後はフィールドの境界線。
今にもうじゃうじゃと帽子を狙う無数の手に飲み込まれそうで、もう後がない。






「そろそろいくしかないかな。
いい、いち、に、さんで押し上げるからね。その時に跳ぶんだよ」

「え……スザク、スザクまでそんなこと私に出来ると思ってるの!? ちょっと、まって」

「いくよ。……いち……に……さん!」

「いやあぁああ!?」









私は宙を跳んだ、というより投げ出された。

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