ムカデ足競走
「今年はお前が先頭か。大丈夫なのか?」
「悪かったわね、小さくて……ルルーシュだって二番目の癖に!」
ムカデ足競争は、言うなれば多人数二人三脚の縦バージョンだ。
メンバーは一列に並び、一本の縄で肩足づつ、全員と結わえつけられる。
進み方は二人三脚と同様、タイミングを合わせて一歩一歩足を上げていく。
「一番先頭はペースメーカーの役割を果たし、しかも前の人のがいないためタイミングを調整しにくい。だが、後ろを気遣って慎重に進む必要はないからな。俺達が合わせる」
「頑張ってね!」
「……お前が言うな……。もう少し、練習よりペースを上げたほうがいい。ここで三位以上にならなければ優勝の可能性がなくなるんだぞ。俺の身が……」
「わかってるよーだ。ほら、始まるよ、さっさと私の肩掴んで」
こっちだって、優勝しなければ色々危機なんですよ! 昼休みに撮られたひざ枕写真とかね! ルルーシュは知らないかもしれないけど。
「……あぁ、わかった。……それにしても、お前本当にちっちゃいな……」
「うっさい! これでも平均身長はあるんだから……みんなが大きすぎるだけ」
「頭一つ分違うんじゃないか? 掴みにくいぞ。途中で離してしまいそうだ」
「うー……」
「……代わりに、腰、掴んでもいいか?」
「いいよー」
ルルーシュが私の腰に触れた瞬間、ぱんとスタートを告げるピストルが鳴る。
「よっしゃ、いくよーっ、せーの!」
まずは準備運動。
いち、に、いち、に、と掛け声と共にその場で足踏み。
タイミングを馴らし、さぁいこうかと右足を踏み出せば、
もみゅ。
もみゅってなに?
変な感触が一瞬頭に引っ掛かったものの、勢いのまま生徒会ムカデは走り出す。いちに、いちに、と連続する掛け声、しかし謎の感触もまたそれに合わせて病むことがない。
いち、もみゅっ、に、もみゅっ、いち、もみゅっ、に、もみゅっ、もみゅもみゅもみゅもみゅ。
どうやらこの感触は腰の辺りにあるようで。
「……ルルーシュ・ランペルージ君」
「何だ」
「何で人様の腰を揉んでるんですかッ!」
「急に揉みたくなった」
ルルーシュの調子はあくまで冷静で。
それが逆に怒りと混乱という火に、だばだば油を注いだ。
「揉むなっ! そして今揉んでる場合かっ! くすぐったい、くすぐったいよぅ! くすぐったくて死んじゃうよ!」
「そんなに足をばたつかせても逃れられないぞ。何て言ったって、俺達は今二本の縄で繋がっているんだからな」
「嫌ーーーー!」
こいつに背後を取られたのが間違いだったらしい!
どうにか早く終わらせたい一心で、足もペースもタイミングももうめちゃくちゃ。
半ば全員を引きずり自分の独走状態、気がついたら。
一位でゴールテープを切ってました。
「俺の作戦通りだ」
「嘘つけぇ!」
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