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サラシと学ラン
「ルルーシュー? 入るよ、サラシ巻くの手伝って欲しいんだって?」

「ぇ……っ、ちょ、何でお前が!?」





昼休みも終了間際、私たち生徒会はまた、次の種目の準備に追われ始めていた。

午後一発目は、応援合戦。各チームの応援パフォーマンスの優劣で、得点がつけられる種目だ。





それは間違いなく我らが生徒会の主戦場!

体力も腕力も必要ない、そこに求められるのは企画力とノリ。
それはミレイ会長の頭の中にいっぱいだ、衣装だって日頃の活動でよりどりみどり!





「う〜ん、でもねぇ、今回は父兄も見てるしあんまり風紀を乱すようなことはするなっておじいちゃんに言われてるのよー……。
本当は男どもに、チアでもナースでもポリスでも何でも着せて踊らせたかったのにぃ!
……ってわけで、コスプレは女子の長い学ランが限界。男どもには普通に、日本のハッピでも着せといてちょうだい。
あ、そうそうルルーシュが呼んでたわよ〜何でも、サラシが一人で上手く巻けないから手伝ってくれ、だって〜」






と、いうのはミレイ会長の弁。





「……また会長の遊びに付き合わされずに済んだことは喜ばしいが、俺はスザクを呼んだ筈だが……」

「まぁまぁ。来ちゃったものはしょうがないじゃん。手伝うよ?」

「な……! おい、俺は今上半身裸だぞ、わかっているのか!」

「うん。別に見ないから大丈夫」

「そういう問題じゃ……」

「だって、見る必要もないじゃない? 恥ずかしがる必要も、そういう仲じゃ、ないんだし?」

「……ぇ……」

「でしょ」

「……そうなのか」

「うん、そうなんです」





それを聞いて、何故かルルーシュは悲しそうな顔をする。

見てほしいんだろうか。
その場合、私は彼を全力で張り倒さなければならない。露出魔は困る。
変態さんは実に困る。





「……た、確かにな、お前に見られたって、別にどうってことはないな。
……お前だって、見たって、どうってことないんだろうな……。
うん、そりゃあそうだ。……それじゃ、頼むぞ」

「おっけー」





私はサラシを受け取って、ルルーシュの背後に回った。





ルルーシュの声が、明らかに動揺を含んでいるのがすごくおかしい。
本当にもう、潔癖症め。
こんなに堂々としていられる私も、どこか変なのかも知れないけど。
普通の男女だったら、反応がまったく逆なんだろうなぁ、と思いつつ、弛みのないようにルルーシュをサラシで締め付けていった。





(わー……でも、腰、細っ!)





ひと巻き目をきゅっ、と絞ればくっきり浮かび上がるそのライン。
骨張ってはいるが、何度布を重ねても常人ほどにはがっしりとしてこない。
男の子なのに、華奢。
それはよく知っている。
でも、改めて実物を見ると、驚嘆しか出てこない。
悪くすれば、私より細いかも? うわぁ、それって私、どうなんだろ。女の子として。



つい見入ってしまって手に力も余計に入り、サラシを絞りすぎてルルーシュに「ぐぁ、」と声を上げさせた。






「ごめんごめん。これで完成、っと」

「……あぁ。死ぬかと思ったが……ありがとう」



完成ついでに、上から羽織るハッピも私が着せてやった。
子供みたいに、後ろから袖に腕を通しながら、ルルーシュは言う。



「……そういえば、女子は学ランか。ただ、お前のそれ……随分と上着の丈が長くないか?」

「へへ、かっこいいでしょ。何でも、白鉢巻きに白い手袋、革靴セットで日本の古式ゆかしい応援団の恰好なんだって!」

「会長って意外に日本文化が大好きだよな……」

「私も好きだよ、ルルーシュは?」

「悪くはない、と思うが。ただ、会長の場合楽しみ方を大いに間違っている時があるから」




ついでのついでに、ねじり鉢巻きも、ルルーシュの頭に締めてやる。
くるりと彼の身体を回しこちらに向かせ、正面から結び目の位置を整えた。

はい、準備完了。





「おっけー、でーきたっと」

「……ん? お前、すごい汗じゃないか」

「え、そう?」





確かに額が湿っぽい気がしてたけど、そんなに?





「そんなに、だ。顔も赤いぞ」

「まぁ、そりゃあそうでしょ。この暑い中長袖長ズボンの学ランなんだから……本番は前を開けてもいいって言われてるけど」

「ふぅん、下はTシャツか?」

「ううん、サラシ」

「サラ……?」

「ほら」

「!?」





上ボタンのいくつかを外して襟を広げ、鎖骨の下までルルーシュと同じように巻かれた巻かれたサラシを見せてやる。

すると、油に火を付けたように一気に赤面するルルーシュ。






「ちょ、おま……お前! そんなものを人に見せるな、早く仕舞えッ!!」

「会長も凝り性だけど、ここまでしなくていいのにねー」

「暢気に言ってる場合かッ! いいか、お前絶対、本番学ランの前開けるなよ!? いいな、絶対だぞ!」

「なんで? 暑いじゃん」

「何でもだ!」

「そんな、横暴な!」

「そんなものを人前に臆せず出すほうがおかしい! 変態がッ!」

「えぇ、いきなり、何故に変態呼ばわり?」

「あぁもぅ……! なんでこんな、俺ばっかり!」

「どういう意味? てか、何で顔赤いの、何でちょっと怒ってるの!? ルルーシュってば!?」



***











「うぅ……暑いよぅ……前開けたいよぅ……」

「まぁまぁ、泣かない泣かない」

「何なんですか会長! いつもはルルーシュの反抗なんて取り下げて、サラシで胸を潰して完璧に男装させようとするほど凝り性なのに、何で今回に限って、あいつの提言に折れちゃうんですか!」

「風紀を乱さないギリギリいい線だと思ったんだけどねぇ、サラシ胸。
だってねぇ、ルルーシュが言うなら仕方がないしぃ……大切にされてるのよ、あんた」

「……そんなことないと思いますけど」

「?」










だって、本当に大切だったら、「迷惑だ」なんて言いますかねぇ?

あぁ、でも私、気にしてしまっているのか。














(意外に、肌白いんだな……。しかも、意外にふっくらラインが出るんだな……。あぁもう、何で俺ばっかり、こんな反応……)




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