[携帯モード] [URL送信]
仮面  カレンと 徒競走



「まずは徒競走か。男子は既に終わって、スザクは圧倒的一位、リヴァルは順当。会長もなかなかの走りを見せ、残るは……カレンか」

「カレン、百メートル走っただけで倒れちゃわないといいけど。大丈夫かなぁ」

「……いや、その可能性は考慮に入れなくてもいいだろうな」



徒競走は勿論、全ての部活が一直線に並んで走れる訳ではないので、何回かに分けて行っている。
最終組のカレンに順番が回るまでには、まだ大分あった。
なので、ルルーシュと私はこれからの競技の様子見も兼ね、レーンのすぐ側でゆったりと観戦していた。

運動部が有利とはいえ、時たま文化部が勝ってしまうことも面白い。おそらく、もともと運動神経がいいか、かつては運動部であったのだろう。
中にはウケ狙いなのか、全身タイツや様々な被り物を被って走っている人もいた。鹿とか、麒麟とか、漫画のヒーロー、プロレスマスク、挙げ句の果てには皇帝陛下。
不敬罪に当たるんじゃないかと思いつつも、やはり笑ってしまう訳で。もしかしたらライバルをそうやって蹴落とそうという作戦なのかも知れない。



そして結果を見ると、やはり特に、陸上部が速い速い。圧倒的スピードだ。
各部活男女四人しか出られないとは言え、出たレースでは必ずトップをもぎ取ってしまっている。
機関車とか、風というのは彼らに最も相応しい形容詞であるような気がした。



「……まずいな……このままでは、カレンに何としてでも一位になってもらわないと、いきなり突き放されてしまう……。しかも、よく考えればカレンが病弱キャラをやり通す危険が……」

「あ、ちょっと見てよルルーシュ。あれ」



私は身体を伸ばして準備運動をしているカレンの横を、指差した。



「あの人、確か陸上部の、全国でも上位レベルの人だよね。よく新聞にも出てる」

「そうか……それは、カレンが本気を出したとしても厳しいかもな……わかった。一号作戦を開始する。名前、お前は、……こーゆーものを急いで作って、どうにかカレンの隣に被せてこい。確か軽いノリのタイプだったから、どうにかなるだろう。あっちは、もう勝った気でいるだろうからな」

「え? ……えー、紙でもいいならなんとか頑張るけど……」

「よろしく頼む。俺は、すぐに戻ってくるから」

「う、うん。……でもどうしよう……あ、すいませーん。そのマスクもういらないんだったら、貸して貰えません? ……よし。これにちぎった紙を貼り付けて……と。なんか白いナイトメアの頭部みたい。こんなんでいいのかな」



















そしてカレンの最終組の結果は、『生徒会の奇跡』第一号と言うべき驚くべき成果が出たのだった。

最初はいかにもお嬢様らしくもったりとしたスタートを決めたカレン。
しかし、白いナイトメア風味のマスクを被った相手を見た瞬間、目の色が変わったように思われた。



そこからカレンは気がついたように急発進。スタートの動作で既に差は開いていたものの、あっという間にそれを詰めて見せた。
そして残り二十メートルでのせめぎ合い。相手は突き放すことも出来ずカレンも並ぶのが精一杯。



足のスピードが落ちてきて、カレンは辛そうにゴールの先を眺めた。
と、そこでまた彼女の目の色が、今度は見開かれ反転する。

カレンのギアはもう一段階上がり、スピードが上がり、見事、逆転勝利。



「すごいじゃない、カレン! なんかいつもとは違うね。どうしたの?」



私は、景品のノートを受け取って帰ってきたカレンに駆け寄った。



「うん……なんていうか、ああいう白いナイトメアっぽいものを見ると、無意識に走り出しちゃうって言うか負けたくないって言うか……いや、気にしないで」

「?」

「ね、それよりゴールの辺りに黒いマントの仮面の人がいなかった?」

「え? 黒いマントに仮面の人? ……まるでゼロだね。まっさかぁ、そんな人、いなかったと思うけど……」

「……うん、そうだよね。ははは、見間違いだよね……」

何故かルルーシュが汗だくになって戻ってきたのは、それからすぐのこと。

[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!