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孫が欲しい
「久しぶりに家族と外に出てな。家庭がな……ちょっと複雑すぎて、子供達には父親らしきことは何もしてやれなんだ」

「はぁ……えっと、わかります、何となく」

「それで、何か子供達に与えてやるべきかと思って、じゅうすでも買いに出たんだが、いざ慣れないものをすると、こうなるな」


前略。何故か副総督ユーフェミア皇女殿下と昼食を食べ、元王子のルルーシュから逃げ出したら、今度は皇帝陛下と並んで歩いています。
巨大なインパクトのある御髪には、縮み上がる思いがします。地毛なのかが気になります。
ついでに、細かいお金を持っていて自販機を使えなかった陛下には、何故か小銭を貸してしまいました。
どうしてどうもこうも、一般庶民が皇族の方々にこんなにも縁があるのでしょう。
別にルルーシュと同じように捨てられ王女とか、そういうのじゃ無かったはずですが。


「でも、それなら、ちょっとの事でも嬉しがってくれると思いますよ」

「白々しいと思われないだろうか」

「まさか! 自分を思って買ってきてくれたものなら、何だって嬉しいと思います」

「それならいいが……」


今歩んでいる道と、木立との間に距離が出来てくる。太陽が顔を出し、深緑が少し淡くなってきた。
やがて完全に分離し、青空と新緑と人通りに溢れた風景が戻ってくる。丁度競技場を一周して、正面ゲートに辿り着いていた。


「ああ、ここでいい。儂は、こっちで待たせているから」

「はい。それでは」

「今日はすまなかった。後で何か礼をしよう……勿論、借りた金も必ず返す」

「いや、別にいいんです、百円や二百円ぐらい」


ちらちらと周りが気になっていた。通りすがる人々がこちらを凝視している。
なんだか、視線が集まっておりますよ陛下。多分陛下だってばれてますけどいいんですか陛下。
一刻も早くここから逃げ出したくてたまらなくなっていた。もう百円か二百円なんてどうでもいいです。むしろ陛下に小銭を貸してしまったなんて思い出の方がプライスレスです、だからいいんです。


「そうは言っても、こちらの気が済まない。必ず、届けさせよう。名前は?」

「い、いや、別に名乗る程の者じゃあございません……」

「フム……。……一つ隠していたことがある。儂は、君が誰だか知っておる」

「……はい?」

「ルルーシュを頼むぞ。早く孫の顔が見たい」

「ままままままままggggg、孫!? へっへっへっ陛下ッ! 何を誤解してるか解りませんがルルーシュとはそういう間柄じゃっ……」


……あ。
自分で「陛下」って言ってしまったわい。


「……じゃ、じゃ、じゃ、そういう事で陛下! 本当に、お金は返して頂けなくても構いませんので! ルルーシュは元気にやっておりますのでご安心ください!!
 それじゃッ!!」


それから陛下にどういう接し方をすればいいのか解らなくて、結局また逃げてしまいました。

さらっと公衆の面前で恥ずかしいというか大仰だというかとんでもないことを言い出すのは、やっぱり血筋なんでしょうか、皇帝も、ルルーシュも。


……孫って何ですか、陛下。


***




「元気のよい子だのぉ……ルルーシュめ、やりおるな」

「陛下、今までどこに行っていたんですか。探しましたよ」

「シュナイゼルか。ほれ、じゅうすを買いにいってたのよ」

「そんな、まさか我々のために!? お手を煩わせて申し訳ありません。言ってくだされば私が買って参りましたものを」

「構わん。お前だって、紙幣が入らなくて買えなかっただろうからな……」

「……?」

「それより、ほれ、じゅうすだ。庶民の、自販機、とやらを使ってきた。コーネリアにも」

「ありがとうございます、父上」

「別に今は跪いて受け取る必要はないが……たまには、こういうことをするのも悪くはないな」





(……ですが、父上この季節にお汁粉って……)

(兄上、私のはコーンポタージュですよ……今の季節に商品を入れ替えてない自販機って、どこまで行ってきたのでしょう……)



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あきゅろす。
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