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シャッターチャンス!



瞼を開け一瞬、真っ黒い太陽が落ちてきたかと思った。





「ふえっ!?」





名前は思わず声を上げる。目覚めていきなり、黒くて大きなまあるいものが、ぴたりと自分にの目の前に覆い被さっていたのだ。
何かと思ってよく目を凝らせば、黒い太陽は大口径カメラのレンズ。間抜け顔の自分が、その表面に薄く反射している。





「うふふふふふ、ぐっども〜に〜んぐ! と、言ってももうお昼だけどねん。ぐっどあふた〜ぬ〜ん!」





溌剌とした声がして、むっくりと身体を起こすと、それに合わせて張り付いていたカメラも私の前からすすすと退いた。

きょろきょろと周りを見回すと、ここは、学校の中庭。目の前にいるのは、ナイスバディを体操服に包んで、計らずとも隠しているのか誇張しているのか正直判断に苦しむ、我らが生徒会長ミレイ・アッシュフォード。
そして、申し訳なさそうにカメラを降ろして顔を見せる、華奢すぎる程に細い肢体のニーナ・アインシュタイン。





「会長……もうお昼ですか」

「そ、お昼休みよ。あんまり遅いんで、探しに来ちゃった」

「ああ、そう言えば、持久走でへとへとになったルルーシュを休ませに来たんだっけ……」





ルルーシュは、疲労のあまりすぐに眠ってしまったっけ。おそらくそれにつられて、その後自分も寝てしまったのだろう。



ん? ところで、何かとんでもないことを忘れてるような。何だったっけ。何かルルーシュに言われて、してあげたような気がする。


多分誰かに見られたら、天地がひっくり返るくらい、恥ずかしいことだった気がするけれど。










『枕が欲しい』










「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!? うわあぁあぁああぁああぁあぁッ!?」



まさかと思って膝の上を見ると、未だすやすや眠り続けるルルーシュの頭があったわけで。

ばっと会長達に視線を戻す。会長はにやにやしている。ニーナはそっと手に持つ大口径カメラを掲げて見せる。
そしてまた、眼下に寝っ転がっているルルーシュと膝を貸している自分の状況を見た。










見られた、そして、撮られた!?










「まったく確かにサボり許可は出したけど、ここまでイチャイチャしていいなんて誰も言ってなかったんだからね〜」

「いやいやいやいや、違います会長! これは不可抗力で! ルルーシュがどうしても枕がないと眠れないって言ったもんだから!
あとルルーシュが持久走頑張ったからです! サービスです、サービス! い、いっつも勉強教えて貰ったり、お世話になってるし!」

「うふふ、まぁ、一生懸命になっちゃって、か〜わいい」




両手を振って必死に否定するも、無駄な抵抗であることは明白で、むしろ自分を追い込んでいることに気がついたのは、ひとしきり慌てた後だったから、どうしようもない。
見下ろす会長の視線は、ひたすら心地よさそうに私に頭を預けるルルーシュに注がれていた。
はっとそれに気づくと、ルルーシュの頭を鷲掴みにした。



「早く起きてよばかぁ! 一人だけ平和に寝てるんじゃないったら!」



そうやってぐぐぐと太ももの上からルルーシュをどけようとしても、あれ、なんか思いの外動かないんですけど。
頭だけは無駄にいいから脳だけ肥大して重いのだろうか。いや、まさか実は今は寝たふりで、嫌がらせのために力入れてるんじゃないでしょうね。
ありえる、ルルーシュのことだから。





「まぁ、それはい〜として ミレイさん、実は我らが生徒会がここまでやるとは思っても見なかったんだなぁ」

「……はぁ」

「だからやる気出させるために、生徒会メンバーがご奉仕♪ なんて企画作っちゃったけど、どうやらそれが裏目に出ちゃったみたいね」

「逆に、やる気出させ過ぎちゃったみたいですね。ルルーシュものすっごく嫌がってましたよ。絶対自分目当てだって」

「勘がいいのねぇ。ま、現在どうにかトップ3についてるのはいいことだし……どうせならこのまま優勝したいなぁ、なんて思っちゃったりして」

「それは私も同じです、是非とも勝ちたいです!」

「だから、あんたも頑張ってね♪ 特に、こいつのお守りとか」




そう言いながら、ミレイ会長はルルーシュの頬をぷにぷにとつついた。



「暴走しすぎないようにうま〜く操縦してやってね。頼んだわよ」

「勿論です会長。ここまでの結果は、多分ルルーシュのおかげですから」

「じゃぁ、優勝目指して全面協力する? 優勝させちゃう?」

「しますとも、させますとも!」

「ふぅん、その言葉に、命かけられる? 自分の何もかもを、かけられる?」

「……え? ……は、はい、かけましょう!」

「よしよし。その言葉に偽りはないな? ニーナー、しっかり録音した?」

「うん、ミレイちゃん」





――録音?





その単語を聞いた瞬間、嫌な汗が、額からぶわっと噴き出した気がした。

見ると、ニーナは、カメラを持っていない片方の手に、今度はレコーダーを握っている。





「もしも、さっきの言葉に反して、我が生徒会が優勝できなかった場合は〜……発言に偽りありとして、さっき撮った膝枕W昼寝の図を、でっかく印刷して生徒会室の前に貼り出しちゃいます!」

「会長ーーーーーーーーーー!!」





どうにもこうにも嫌な予感がすると思ったら! 




「いやぁあぁあぁああぁぁっ、それだけはやめてください! 今度のコスプレパーティーで、スク水でもメイドでも何でも着ますからあぁあぁぁ」



「大丈夫よぉ、優勝すればいい話なんだから! 仲良くルルーシュと協力して、頑張るのよおー! じゃあねん!」





ミレイ会長は朗らかに笑うと、ニーナを連れてさっさと行ってしまった。
追いかけてカメラとレコーダーを奪い去りたかったが、相変わらずルルーシュが膝を占領しているので、立ち上がれず、無念。
その二人の背中をただ見送ることしかできなかった。





「……えらいことになった……」





ルルーシュを笑っている場合ではなくなったらしい。今度は、自分の身が危ない。
はぁ、と溜息をついてルルーシュのあどけない寝顔を見つめた。やっと、君の気持ちがわかったよ、身にしみるぐらい。

午後も何もかも、今まで以上に全力で頑張るしかないようだった。膝枕ショット大☆公☆開、なんて、そんなハズカチイことあってたまるか。
しかも、なんかピンク系のにほひがするし、字面にしたら。





「本当に、寝てるふりしてるんじゃないでしょうね」





一人ごちながら、そっとまた、ルルーシュの前髪を梳く。優勝の前に、どうやってこいつを起こしてやろうかと、まず問題はこれからだった。




















(もし、優勝できなくて、写真が公開されたら、既成事実に……なるわけないか……俺は、何を考えてるんだ……)

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あきゅろす。
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