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ゼロ in 棒倒し



「ああ、お前達が俺と同じチームのメンバーか、全員集まってくれたか? 一体何の用か、って? 別にお前等と馴れ合うつもりはないさ。だが、棒倒しは運動部文化部男子が混合で二チームに分かれて行うんだ、全体の指揮を執っておかないと駄目だろう。……何、お前の指揮にどうして従わなければならんのか、だと? 従って貰うさ。お前達にまでポイントが入るのは癪だが、取れるものは取っておく必要がある。そのために……ルルーシュ・ヴィ・ブリタニアが命じる。
貴様達は、棒倒しの間、俺に絶対服従しろ!」











運動場の両サイドに長い木の棒が立てられ、その先端に結びつけられたハチマキを争奪する競技、棒倒しが始まろうとしていた。

二本勝負で、エントリーは男子だけなので、私は木陰で疲れを癒やしつつ、シャーリーやミレイ会長とそれを眺めていた。

学園の全男子が集結したことで、既に妙なむさ苦しさと汗臭さ男臭さが漂うフィールド。
そんな雰囲気は死ぬ程毛嫌いしそうなルルーシュだが、それにも関わらず、何故か精力的に先頭に立っていた。





「A部隊は雁行の陣でややゆっくりと進め、できるだけ敵を食い止めろ」

「イエス、ユアハイネス!」

「敵がA部隊突破に気を取られている間に、その左右からB部隊は、敵フィールドに侵入。敵の棒を直接攻撃」

「イエス、ユアハイネス!」

「残りはその場で待機、棒を全力で死守しろ」

「イエス、ユアハイネス!」










「なーんかルルってば、本格的ねー……」

シャーリーがそう呟くのに対して、私もうんうんと縦に首を振る。

「だよねぇ。まるで、本物の戦争するみたい」

「やだぁ、そんな物騒だよ……。黒の騎士団も最近やたら動いてるらしいって言うのに。……でもさ、ルルって何か妙な所あるんだよね」





どこか熱っぽい彼女の視線の先で、ルルーシュは組み体操でやぐらを作った数人に担ぎ上げられていて、まるで本当に大将軍のようだった。
そりゃぁ彼が地べたに素足で走ってもみくちゃになるのも似合わないけど、ちょっとやりすぎだとも思わないでもない。





「いつもは世捨て人か隠者みたいに、世の中を上から見てるって感じするけど……たまに変に一生懸命だったり」

「まるでジキルとハイドみたいだね」

「あー、うん、それがぴったり。いっつも何考えてるかわかんないし……どっちが本当のルルなんだろう?」

「いや、実はシャーリー、そんな両面ひっくるめて全部まるっとルルーシュが好きだったりして?」

「……い、いや、いや、そんなこと無いったら! ただ、ちょっと気になるだけで! もう、からかわないでよ〜」





そんな否定をしつつ、シャーリーの頬はほんのりと朱に染まる。

やっぱり、シャーリーは好きなんだろうな。ルルーシュのこと。

二人は仲良しだし、その恋が実ればいいと思う。言ってくれれば手伝ってあげてもいいと思う。
けれども、何だかちょっとだけもやもやするのは、何でだろう。最近の、大きな悩みだ。





出所不明のメランコリックな気分が沸いてくると、間髪を入れずに乾いたピストルの音が響いた。





競技開始の合図だった。





はっとして、シャーリーと一緒に正面のフィールドに向き直る。





「始まった始まった! ルル頑張れー!」

「ルルーシュー! ちょっとは自分で闘いなさいよーッ!」





男子達が躍動し始める。血眼でただひたすら棒一点を目指し、戦いを繰り広げる。己の野生を解放するかのように、血気漲らせた突撃の開始。





しかしながら、勝負の趨勢はおそらくルルーシュの予想通りに進んだであろう。





ほぼ一直線に並んでゆっくりと進軍する一団に阻まれて、相手は殆どこちら側に到達することが出来ないでいた。
万里の長城とでも言うべきその堅牢な防壁を、突破することに敵は気を取られ人数を裂き、棒の守りが手薄になっていた所に、実は着々と近付いていた新たな部隊が攻める、かき分ける、引っ付く、よじ登る、棒を倒す――、鮮やかなまでの戦略に、あっという間に決着がついて、ピストルが再度鳴らされた。





「――ふははははははっ、やれば出来るじゃないか!」





それを見た、ルルーシュの高笑いは、英雄と言うより悪役と称した方が合っている気がして。





「すごいすごいルル、今回は楽勝だね!」

「いや……何か能力を大分無駄な方に使っている気がしないでもないけど……」





才能の無駄遣いとはまさにこのことではないか、と無邪気にはしゃぐシャーリーには申し訳ないがそう思った。
いや、有効活用したってどっかの仮面の人のような使い方しかないのかもしれないが。










だが続く二本目、状況は一転、戦場に暗雲が立ちこめる。

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