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更に数分が過ぎて空が茜色に染まり始めた頃、はふっと小さな溜め息を溢した少女が肩に掛けた袋から何かを取り出した。
小さな本のようなものを開いてそこに何事かしたためると、それを切り取って半分に折り畳んだ。
そして再びステップに足をかけ、何故かドアではなくフロントガラスの方へ手を伸ばしてきた。

この少女に限っては悪戯目的ではないような気がして、オプティマスは好きにさせてみた。

小さな体を乗り上げるようにして手を伸ばすが、どうやら目的のものには手が届かなかったらしい。
一旦降りて手の中の紙を幾重にも折り、不自然に細長い形状を作ったかと思うと、次にはそれをサイドミラーの柄に結び始めた。

成る程、取り付ける場所を探していたのだなと納得し、となると、どうやらこの紙は自分へのメッセージであるらしいことを理解したオプティマスは、ある種の感動と共に少女を見つめた。

サムとミカエラを除けば、軍関係者意外の人間と接触をもったことなど皆無だ。

姿を隠し、人間の世界に溶け込む為の擬態は完璧で、それ故巨大なトレーラートラックの色鮮やかな外装に目を止める者がいても、当然それ以上の関心を引く事など有りはしないのだから。



どうにか紙を結び付けることに成功した少女が満足そうに頷き、そっと装甲に触れた。


「ありがとう」


小さな、しかし明らかに自分に向けられた言葉に、スパークの中心が騒めくようなむず痒さに襲われた。
正体の知れない感覚に戸惑い、ようやくその場を立ち去った少女が視覚センサーの追尾範囲から外れるまで追い続けた。


『ありがとう』


記録した声を繰り返し再生しながら、オプティマスはゆっくりと帰路に向かって走り出した。





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あきゅろす。
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