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「ラチェット先生!私の話ちゃんと聞いてます!?」

「聞いているとも」






古郷から送られてきたのだという差し入れの「酒」を皆に振る舞いたいと、彼女がレノックス達を呼び集めたのは3時間49分前だった。
既に日付も変わり、基地に残っているのは夜勤組とオートボット達だけだ。もっともラチェットを除くオートボット達も各々スリープモードに切り替えており、賑わいを見せているのは即席のBarに作り替えられた一室だけなのだが。


キリの良いところまで纏めたデータを保存し、自身も格納庫へ向かおうと部屋を出ようとしたところで、丁度部屋へ入ろうとしたらしいカレンと鉢合わせた。


「ラチェット先生!酷いと思いませんか!?」


開口一番そう訴えられた時点で、彼はカレンが常とは明らかに様子が違うことに気付いていた。
「酒」という単語を聞き、それがアルコールの一種であると教えられてから、探求心旺盛な軍医は無論それが人体にどの様な影響を及ぼすものなのかを調べていた。

金属生命体であるラチェット達であっても、高濃度エネルゴン酒や似たような嗜好品を好む者も少なくはない。それに似た類いの物だとは理解したものの、体内で分解できない容量のアルコールを進んで摂取する行為までは理解の範疇を越えていた。


「だからバンブルビーさんは首にケーブル巻いて引っ張って来なきゃダメなんですよ!」

「ああ、そうだな」


成程。これが絡み酒か。

片手に酒瓶、片手にスルメを握り締めたカレンに捕まって十数分。
日頃の鬱憤を垂れ流すようにくだを巻く彼女を興味深く眺めていたラチェットだが、ウンウンと適度な相槌を打っているにも関わらず、「先生は私の話なんか興味無いんですか!?」といきなり逆ギレしてこられた辺りから、自分は絡まれているらしいという事に気付いた。

彼女はどちらかというと生真面目で、普段はこんな風に突っ掛かってくるような事はまず有り得ない。それを物珍しさと興味半分に観察していた自分にも責任の一端は有るかもしれないが、如何せん目の座り具合が半端無い。
確かカレンは明日も通常勤務の筈だ。
これ以上の深酒は支障を来すだろうとラチェットはやんわりと就寝を促した。
するとカレンは途端に顔をクシャッと歪ませ、大きな瞳を潤ませた。


「先生は私のことなんかどうでもいいんですね」

「ふむ。脈絡の無い言動に常ではない感情の起伏。明らかな泥酔だな」


ラチェットは冷静にそう分析した。


「飲みすぎは体によくない」


まともな会話が成り立たない相手に容赦せず、大事そうに握り締めたスルメをその手から抜き取り、残り僅かな酒瓶に手を伸ばそうとしたところで「ああああっ!」とカレンの悲痛な叫びが上がった。




 


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あきゅろす。
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