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04














「っ…」



口をだらしなーく『あ』の字に開いたまま、ぼけーと呆ける俺。

シャーペンがカラン、と音を立てて参考書の上を転がった。

あとで拾うのはめんどくさいけど、それどころじゃない。そんなのーでもいい。



だって、だって。

え、なんで、どうして。




「うえっ!? もももしかして彼女さんと一緒でしたか!?」




あ"ぁーこん畜生。絶対俺の今の顔、カッコ悪ぃ。

でもどうしてもこのアホ面はなおせねぇ。

つか、こんなこといちいち気にしてる俺だせぇ。


一人やきもきする俺。

彼女は申し訳なさげにぽつりぽつり、言葉を紡ぎ出す。


視界の隅に綺麗な黒髪が漂った。

微かに香るは、甘い甘い林檎の香り。



「す、すすすいません私ってば─…

席……もうここしか…空いてなくって……」



動揺しているのか、唇に手を当てて、所在なさげに宙をさ迷う漆黒の瞳。

内気な君の、昔からの癖。


変わらない。変わっていない、何もかも。


その声も、雰囲気も。
ぜんぶぜんぶ、昔のまま。

俺の知ってる、君。
ありのままの、君。




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