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哀しみのアルカナ
「お、名前」
「あ、ベルさん」

廊下ですれ違ったベルさんに声をかけられた。
「ちょっと俺の部屋に来てくんね?」
「暇だからいいですよ」

ボスが休暇をくれた。
まあ、鍛練兼、休暇だけど。

ベルさんの部屋は思いの外汚かった。

「あ、あった」

ベルさんが机から取り出したのは一冊のアルバム。

「…なんでですか?」
「ししし、お前言葉とは裏腹に見たそうな顔してんじゃん」
「…うるさいです」
「ししし、まあ見なって
マーモンもいるからさ」

マーモン。マーモン……マーモン…
最近聞いたような気がする…

あ…
フランさんの前任の人か…

「ほら、見ろよ♪これマーモン」

ベルさんが指差したのはフードを被った赤ん坊。

「……僕がこの人に似ていると?」
「あ、お前知らなかったな
マーモンはアルコバレーノなんだぜ
呪解したら、こんな立派になんの」

今度指差したのは、またもやフードを被った男の子だった。

確かに、顔のペイントを消せば少しは似ているかもしれない。

「…綺麗な人ですね」
「だろ?頬っぺたプニプニなんだぜ」

最近気づいたけど、マーモンさんの事を話すベルさんはすごく楽しそうだ。


フランさんが、なんで僕を嫌っているのか

一瞬わかったような気がした

「ベルさん、ありがとうございました」

「あ、名前待てよ」

「はい?」

「ベルって呼んでくんね?その方がマーモンっぽいし」


(嗚呼、今一瞬)
(僕もマーモンさんに嫉妬してしまった)


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