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1 飛び出した少女
「あっ!!名前ちゃん!待ちなさい!!」

もうこんなところ嫌だ!!自由なんてないし、ご飯は冷たくてまずいし…
孤児院なんて建前なんだ。私は知ってる!
…自由が欲しい!


「…はぁ…はぁ」

おなかがぐぅ、と鳴った。ああ、ご飯食べてから出てくればよかったな…
あ、でも走ったらお腹いたくなっちゃうからこれでよかったかも。

「…でもおなかすいた」

さて、どうしましょうか。
……………餓死?
いやいやいやいや!!!
私は死ぬ前に自由になるの!!何考えてんのバカ!!

でも…だんだん眠くなってきたや
お外で寝ちゃいけないんだよね…でも…

もう…む……り





「ムム…子供がこんなところで寝てるとは…」



「いたぞバイパー!!今度こそお前の能力を使わせてもらおうか!?えぇ!?」
「うるさいな…
僕には叶わないさ」
「ぁん!?そんなこ…………

ひ、ひぃっ!!なんか来る!!たっ!助けてくれぇぇ!!

ぎゃあぁぁぁ!!!!」
「そこには何もないよ。まだまだ甘いね」

「ぐ、ぐあぁぁぁあぁぁ!!!」







目が覚めたら、そこはベッドの上だった。何もないし無駄のないへや。

やべ、誘拐された?

「やっと起きたのかい?もう昼だよ」
「うわぉ!!誰!!」
「ムム…教える義理はないさ」
「…泊めてくれてありがとございます」

ペコリと頭を下げる。それにしても変わった格好してる人だ。

ぐぅぅぅ…

「あ」
「…

腹減ってるのかい?」

はい。頭を下げる。

「ルーチェなんか持ってるかな」

そう言って男の子は出ていった。なんか可愛かったな。誘拐では無さそうだからよかった。
ご飯食べたらまた出てかなくちゃ

そんなことを考えてるとさっきの人が帰ってきた。はえぇ。
「ルーチェがクッキーあげるって」

差し出されたクッキーの袋を見て思わず目が輝いてしまう。
めっちゃ美味しそうだなぁ

袋からひとつ出して、かじってみた。


「…すごくおいしい」
「それはよかったね。」

こんなおいしいものは食べたことない。
またかじる。ふと孤児院を思い出した。

遊び道具も、なんにも無いところ。
子供は食事と寝る時以外ずっと部屋にいる。
おさんぽもしない。パパとママもいない。

なんにも、ない。


「おいしぃなぁ…っ」

ふいに涙声になってしまった。隣の男の子が気を使って新聞紙で顔を隠した。

孤児院の子達にも食べさせたいなぁ…
小さい子なんて、どんなに喜ぶだろう

クッキーは、全部食べなかった。
非常食用にした。後ろめたかったのもあったけど…


「ありがとございました
名前聞いてもいいですか?」
「だから言っただろう
名前を教える義理はないよ」
「いや、恩人なんで」
「うるさいな。恩人はルーチェさ。僕はもって帰っただけだからね」
「…分かりました」

「さよなら
ルーチェさんにありがとう言っといてください」
「ああ、分かったよ」

部屋を出る前にちらりと写真が見えた。
中国の服を来た少年とさっきの男の子。
仲良さそうに写ってる。
下に"Von・Marmon"
あ、マーモンっていう名前なんだなぁ
かわいい名前。


覚えておこう。









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