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SoulCalibur's Novel
断罪の剣U
―知っているかい?ジーク。
不意に、以前旅をしてきた戦士の一人の言葉を思い出していた。
―この世界には、邪剣に対抗し得るもう一本の剣があるらしいんだ。だけど、それは姿を変えて何処かの戦士の手の中にあるらしい。
ジークは問うた。
「ソウルエッジに対抗し得るもう一本の…剣?」
―あぁ。それは持ち主との魂の波長があったとき、もしくは…本当の危機にさらされた時にしか現れない…とか何とか。噂だから、あてにならないかも知れないけど。
「存在しているのかどうかさえも、怪しいな」
―噂だから、仕方ないさ。でも、僕はこう思うよ。光の在る場所には必ず、影の存在がある。
その最後の言葉は不思議と、彼の中で響いていた。
―光の在る場所には、必ず、影の存在がある…―


自分の剣を背負い、彼はその建造物を見上げた。
壁は崩れて、ステンドグラスも割られており、廃墟と化したその場所。
それなのに、神々が舞い降りて来そうな雰囲気を持ったそこは、礼拝堂だった。遠くを望めば、祈りを捧げるための鐘があった。しかし、それもすっかり寂れてしまい、打ち鳴らされるのも久しく感じられた。
―ただ、滅びに向かってその身を委ねている…。
ジークはそんな場所に1人興味を持たずに内部へと入っていく。ほとんどが朽ち果ててしまっているから、建造物としての役割をすでに終えているのかも知れないが。
ある程度入っていくと、足を止め、そして背中から自分ほどの丈がある巨大な剣を抜き取った。それを床に突き立てる。そこは広く、礼拝堂を見渡せた。
息を深く吸い込む。
「―――ナイトメアッ!」
全ての思いを吐き出すようにして、すかさず叫んだ。
「俺は此処にいる!邪剣の欠片も此処にある!だから―」
その時。
轟音とともに、一部の壁が崩れ落ちた。砂埃の中から何かが、こちらへと歩み寄ってくるのが分かった。鎧と鎧のこすれ合う音が響いてくる。
現れたそれは全身を鎧で包まれていた。暗い蒼をたたえた鎧だった。右腕は人のものではなく、伝説上の怪物からもぎ取ったような―――そんな腕をしていた。鎧の隙間からのぞく眼は紅く、冷たい輝きが放っていた。
左手に引きずっているのは、ジークと同じく自分の丈ほどある巨大な剣だった。巨大な剣の中央には一つの眼があり、それは彼を求めてきょろきょろと動いていた。
「ジーク…フリート……」
低く太い声が顔を覆っている鎧から発された。この声を―――ジークは何度忘れようと思っても、忘れられなかった。
「―――…ナイトメア」
ナイトメアは悪夢を意味する。悪夢―――それが蒼い戦士の名前だった。
「長い間、貴様をずっと待っていた…」
「………」
「今日の日で決着をつけよう。俺の許されざる過去を―――償いへと変えるために」
「償いだと?」
ナイトメアは、嗤う。

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