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SoulCalibur's Novel
SerenityU
少しだけ考えて、キリクは答えた。椰子の葉の隙間からこぼれる光に瞳をわずかに細めて。
「俺は――…うん。真喜志とシャンファと一緒にもう一度旅をしたいと思う」
彼は思い返す。ある時に真喜志がいなくなって、シャンファと二人だけの旅となった。そして、やっと再開出来たと思ったら、彼は記憶をなくしていて。彼が記憶を取り戻すまでにかなり長い時間がかかったような気がする、と彼は思った。――だから。
「せめて、真喜志ともう少し一緒にいたいんだ。それはシャンファも望んでる。傲慢かもしれないけど――三人で幸せな時を過ごしたい」
それはキリクの強い願いだった。ソウルエッジがイヴィルスパームと呼ばれる美しくも人を狂わせる光を放った時、彼の故郷だった真行山臨勝寺は一夜にして崩壊した。彼の武器・滅法棍を伝承される祝福の前夜、臨勝寺の者たちは狂った光に魅せられ、虐殺を始めた。それはキリクも例外ではなく。
そして彼が自我を取り戻した時、目の前には愛する義姉シャンレンがいた。…キリクの滅法棍に腹を貫かれた状態で。
――そして、シャンレンは死んだ。
キリクは強い悲しみに苛まれた。寺が滅んでしまったのもあるが、何より自分が大好きだった義姉を手にかけてしまった事に強い罪悪感を抱き。
――月に吠えて、命を絶とうとしたこともあった。
しかし、それは阻止された。それをしたのは、彼の師匠にあたるエッジマスターだった。彼はキリクに邪気をコントロールする術を教え、そして言った。「全ての答えは西にある」…その言葉を信じて彼は旅立った。


そして今日に至るまで、もう四年という月日が経っていた。もしこの先、自分が関わりある人を殺さずに生きていけたら――そう思うとキリクは自然と唇から微笑がこぼれていくのを感じた。
「真喜志はどうするんだい?やはり琉球へ帰るのか?」
キリクは彼に問いかけた。答えはすぐに帰ってくる。
「俺も、お前とシャンファの三人でまた旅をしたいと思ってる。お前が旅を楽しみたいと思うなら、とことん付き合ってやるぜ」
「ありがとう、真喜志」
また、三人で一緒になる日が来るんだ――そう思うだけでキリクの胸は高鳴った。その時だ。
「――キリクーッ!真喜志ーっ!」
遠くで、シャンファの清らかな二人を呼ぶ声が聞こえた。すぐに真喜志は立ち上がった。
「だいぶ時間を潰しちまったな。早く行こうぜ」
「あぁ」
キリクも立ち上がって、棍を片手に歩きだす。その時、彼らの瞳はどんなふうに輝いていたのだろうか。
――そして、彼らの新しい旅が静かに始まりを告げた。

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あきゅろす。
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