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届け、この気持ち(沖神)

ついこの間、うっかり、本当にうっかり、自分がアイツに抱いている感情の正体に気が付いてしまった。

今まで沢山のドラマを見てきた私の頭で推測すると、この胸がドキドキする気持ちは、たぶん、いやほぼ確実に“恋”。
わかりやすく言ってしまえば、私はアイツのことが好き、ということで。

それに気が付いてしまった時のショックは凄まじいものだった。
今まで嫌なヤツと思っていたはずだし、関係といっても良く言って喧嘩仲間、悪く言ってしまえば天敵、というようなヤツだったのに。
それが本当は好きでした、なんてバカな話、今時ドラマでもあり得ない。

でもしばらくして落ち着くと、そんなことはもう気にならなくて。
アイツは私のこと、どう思ってるのかな、等とすっかり恋する乙女になってしまった。
嫌われていたらどうしよう、と思えば何か違和感を覚えよくよく考えてみる。
頭の中を飛び交うのは、刀と番傘で殺り合う私とアイツ。
いつだったかアイツの足の骨を折ってやった時の私。
汚い罵詈雑言を飛ばす私。

…好かれる要素が1つもなかった。
というより嫌われる要素しかない。
かなりの高確率で、嫌われている。

とたんに胸の奥ですとん、となにかが落ちる。
ひんやりと体の中心から冷めていくような感覚に、いてもたってもいられず、思わず万事屋を飛び出した。

ただ町中を走る、走る。
目的もないままひたすらに走る。
一度ギュッと目をつぶってさらにスピードをあげると、聞きなれた、さっきからずっと頭の中で響いている声が聞こえた。


「お、チャイナ。んなに急いでどこ行くんでィ。」


今まで忙しなく動き回っていた脳みそか、一瞬にして動きを止める。
振り向けば、当たり前にアイツがいて。
どうしよう、と思わず怯むが、ここで無視したら今以上に嫌われてしまう気がして、少し俯いて顔を見ないようにしながら沖田の前に立った。


「別に。特に用はないけど走りたかったネ。」

「ふぅん。あんまり砂ぼこりあげて走ってるんで怪物でも出たかと思ったぜィ。」


ぷちり、とこめかみの辺りで何かが切れたような音がした。
反射的に拳に力が入り、たたんだ番傘を持っている手を握りしめる。

しかし、あと一歩、あと少しで番傘がうなりをあげようとしていた瞬間、私の脳みそがストップをかけた。
…これ以上嫌われたらダメアル。

爆発しそうだった感情はだんだんと落ち着き、全身からゆっくり力を抜く。
そして、出来るだけキツくない声色で、と意識して声を絞り出す。


「…悪かったナ。怪物みたいで。」


頑張った声色は別段かわいいわけでもなく、弱々しく出ただけで、何より言った言葉があまりにもかわいくない。
ああ、こういうところがダメなんだろうな、と頭の中で自嘲気味に笑う。

俯いたまま弱々しく呟いた私に、目の前の沖田は驚いているようだ。
そりゃあ、あの状況で飛びかからないなんて普段の私じゃ考えられないから。


「…おいチャイナ。何かあったのか?具合でも悪いのかィ?」

「…具合は悪くないネ。」


いつもとは少し違う声色で訪ねてきた沖田に、返す言葉はそっけない。
はあ、とまたため息を付きそうになったとき、俯いた頭に何かが乗っかった。
疑問に思い顔を揺らせば、あっけなく髪の上を滑ったソレを、落ちるギリギリのところで受け止める。
受け止めた手のひらに乗っかっていたのは、私がいつも食べている酢昆布の箱で。


「元気ないみたいだから、それ、やりまさァ。酢昆布食って早くもとに戻りやがれ。」


決して優しくはない言葉と一緒にもらった酢昆布は、とても特別なものに見える。
そのまま何も言わないでただ手のひらの中の酢昆布を見つめていると、じゃあな、とそのまま背を向けて歩いていく沖田。

あ、行っちゃう、どうしよう、とまた頭が回転しはじめる。
いつもならそのまま何もしないだろう。
でも今は、自分の気持ちに気付いてしまったから。


「沖田!」


くるりと振り返った無駄に整った顔を見つめ、喉の奥から全精力を費やして声を引っ張り出す。
今日はちゃんと伝えないと。


「ありがとナ!」


力一杯叫んだ台詞は、きっと沖田にしっかり届いているだろう。
「どーいたしまして。」といつもの意地悪そうな笑顔とは少し違う表情で笑うと、沖田はそのまま行ってしまった。

その背中が角を曲がるまで見送り、再び手の中を見ると、そこには見慣れているはずなのに、何故だかいつもとは違って見える大好物がしっかり握られていた。
















(今日から全力で届けます)








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沖←神に見えて、実は沖神なんだよっていう(^^)
沖田は神楽が好きなこと自覚してて、神楽が自分のことを好きなのも気付いてて、神楽が早く自分の気持ちに気付けばいいと思ってるんです←分かりづらいw


あきゅろす。
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