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彼女奪還の乱(沖→神)

事件の香りなど微塵もしない、よく言えば平和、悪く言えば暇、そんな昼下がり。
見回りだとかいう正直どうでもいい仕事で、俺はパトカーの助手席で窓の外を眺めていた。
頬杖をつきながら適当に視線をやれば、溢れかえる人、人、人。
皆一様に平凡で、ああ、なんて面白くない、と運転している隊士に聞こえないように声を出さずに呟いた。
仮にも、一応、とりあえずは武装警察である俺、平和は望ましいことなのにちょっと不謹慎かな、と思うが誰にも知られなければいい話だ。

あまりの退屈さに額のアイマスクに手を伸ばしかけたとき、少し遠くに見知った銀髪と、ピンク頭が見えた。
急いで運転している隊士に止めろ、と怒鳴り、驚いて車が止まった瞬間ドアから飛び降りる。


「え、沖田隊長!?」

「先に屯所に戻ってなせェ。ちょっと急用。」


勢いよくパトカーのドアを閉め、早足で銀髪を追いかける。
(人混みと身長のせいでピンクは確認できない。)


「旦那、お久しぶりでさァ。」

「おー、総一郎くん。」

「チッ。サド野郎カ。」

「総悟でさァ。チャイナァ、人の顔見て舌打ちとはいい度胸じゃねぇかィ。」


とりあえず息は切れていないから、早足で追いかけてきたなんてバレてないだろう。

旦那はいつもと同じく飄々として掴めなく、チャイナはいつもと同じく俺を見て不機嫌だ。
嫌そうに眉間にしわをよせ、旦那の後ろに隠れる。
毎回同じ動作だが、それをやられる度俺が少し傷ついていることをチャイナは知らない。

だが今の俺たちの関係では、それが当たり前で。
いつか変えて見せる、と勢い込んでも、今すぐ、とかは無理で。
(まず一方通行の思いをどうにかしなければ。)
とりあえず、つまらなかった時間を充実したものに変えるべく、わざわざ追いかけてきたのだ。
ただ立ち話(といえるかも微妙)しただけじゃ物足りない。


「それにしても暇ですねィ。」

「お前が暇だからって関係ないアル。言っとくけど今日は喧嘩しないネ。」

「なんだいチャイナ。敵前逃亡ですかィ?」


適当に挑発すれば絶対のってくる。
そう思っていたのに、今日は違った。


「…とにかく今日はそういう気分じゃないネ。行こう、銀ちゃん。」


そのまま旦那の腕を引っ張ってずんずん歩いていってしまったチャイナに、ただ立ち尽くすことしか出来なかった。

え、俺喧嘩もしてもらえなくなった?
そんなに嫌われたか?
いやいや、もしかしたら女子の日とかかもしれないし、そんなにネガティブに考えなくてもいいんじゃないか。
いやでも待てよ。いつもなら絶対のってくるはずなんだ。
何かやったか?

たぶん顔には出てないと思うが(出てたら恥ずかしすぎて死ねる)、俺の頭の中では色々なものがあり得ないくらいの早さで回転していた。

その場に立ったままぼーっとチャイナと、チャイナに腕を引かれている旦那の背中を眺める。
その間も頭の中は相変わらずぐるぐるしていて酔いそうだ。
とりあえず落ち着こうと詰まっていた息を吐こうとした時、何も違和感のない自然な動作で旦那が振り向いた。
振り向いた顔は小さな微笑みで、なんとなく負けた気がする。

吐こうとした息がさらに詰まった。
また顔を前に戻した旦那が、「神楽、酢昆布買ってやる。」と柔らかく言って、チャイナの明るいソプラノが「マジでか!」と叫んだのが聞こえてくる。



くそ野郎、いつか俺が隣で酢昆布買ってやる。
チャイナの背中を見ながら決意してみたが、それが達成されるのはいつになるだろう、と冷静な自分が囁く。

なんとなく気にくわなかったので、チャイナの隣にいる旦那の背中に、いつか旦那の位置奪ってやりまさァ、と挑戦状を叩きつけた。















(お前の隣は俺のもの。)




沖→神大好物なんです!
沖→→←神ぐらいが調度いいw
沖田は神楽を溺愛しちゃえばいいよ←

銀ちゃんは、「まだうちの娘はやらないよ。」みたいなお父さん的思考になってるといい…!

ちなみに神楽が喧嘩しないのは、沖田が好きで喧嘩相手として見てほしくないから…とかこっそり沖→←神な感じでお願いします



お題配布元:徒花


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