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なんだかんだで、(七組)

今日はとにかく寒い。
昨日からテレビで「雪が降る」と繰り返し言っていたが、まさか本当に降るとは。
朝家を出たら一面銀化粧で、我ながら子供っぽいかと思ったが、テンションがあがった。



寒さを我慢して、何とか学校までたどり着き、朝練もないので教室でゆっくりしていたのだが…。



『おまえら…何やったらそんなになるんだ?』


俺の目の前に立っている二人…同じクラス、同じ野球部の阿部と水谷だが、何故だか知らないが、二人とも髪の毛から爪先まで全身びしょ濡れだった。



『あはは、花井おはよー。』

『ちーす。』


『あ、あぁ、おはよ。…で何やったんだ?』



笑顔で挨拶した水谷と、いつものように無表情の阿部。



『それがねー!花井聞いてよ!学校来る途中で、前に阿部が見えたからね?ちょっと楽しいかなって思って、背中に雪玉投げてみたの!もちろん軽くだよ?そしたら阿部怒って、俺に思いっきり雪玉投げ返してきたの!キャッチャーの肩で思いっきり投げるなんてひどくない!?軽く当てただけなのに!』



捲し立てるように話を進める水谷にうんざりする。



『…水谷、それはお前が悪いと思うぞ…。』


『えぇー!?なんでよ!』


『ほらみろ。クソレがつまんねー出来心で雪玉なんか俺に当てんのが悪ぃんだよ』


『あー!またクソレって言ったぁ!花井ぃ!阿部がいじめるー!』



なんでこいつらはいつもこうなんかな…。


『とりあえずお前らジャージにでも着替えてこい。そのままじゃ風邪ひくぞ。』


『あー!花井流さないでよー!阿部がいじめるんだってぇ!』


どうしよう、本気で水谷ウザイ。いや、ここでキレたらもっとめんどうなことに…




『おら、さっさと言われたとおり着替えてこいよ。着替えねぇで風邪でもひいたら、フライ全部落とすぞ。』


『全部なんて落とさないよ!いや、一本も落とさないもん!…て、阿部は?着替えないの?』


『俺はお前と違って避けるのもうまいからな。お前ほど濡れてねぇし。』


『あ!今バカにしたでしょ!阿部のバカ!』


『あーわかったわかった。さっさと行け。』



助け船は意外なところからきた。
ぶつぶつ言いながら着替えに行く水谷。


確かに良くみれば、阿部は濡れているのはコートだけで、もちろんコートの中は濡れていないし、ズボンもあまり濡れていないようだ。


まて、なんで水谷はコートの中からズボンまでびしょ濡れなんだ。


阿部に視線を送ってみるが、あっけなくスルーされる。



『…とりあえず髪の毛は拭けよ。』


『おう。』



短く返事をしながら鞄をあさり、タオルを取りだした阿部は、無造作にわしゃわしゃと髪の毛を拭いている。



なんで雪玉あたったくらいでこんな濡れてんだろ。

水谷といえば、コートの中まで濡れていた。普通濡れないだろ、普通。



ふと思った疑問だったが、自然と一つの答えが思い浮かぶ。



『…お前、水谷のことバカにしてたけど、案外自分も雪合戦楽しんだろ。』



すこしにやけながら言うと、阿部はいつものように、


『死ねハゲ。』


と一言で切り捨てた。




その向こうでは、これから猛ダッシュで着替えにいくであろう水谷に気付いた篠岡が、優しく笑顔でタオルを貸していた。





脳裏に、阿部が水谷を捕まえて、コートをひっぺがえして中に雪玉をつっこんでいる光景がうかぶ。













(…雪合戦、おもしろいかもな。)













水谷君はウザカワイイw
花井君は皆のお父さん。
阿部君はなんだかんだ←
千代ちゃんは女神!

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