例えるならばパステルピンク(泉阿)
確か俺と泉はテスト勉強をするために俺の部屋にいるはずだ。
テスト週間に入って、数学がわからないという泉に頼まれてだ。
そのはずなのに、この状況はなんだ。
「あーべ。」
「…」
「あべー。あべたかやー。」
「…っうるせぇな!なんだよ!」
「飽きた。遊ぼ。」
平然と言ってのける目の前のこいつに溜め息すら出ない。
誰のために数学教えてやってると思ってんだ。
とりあえずまだ人の名前を連呼してる泉は無視して、手元の問題集に目を落とした。
どっかの誰かが教えろっつーから説明してやったのに、前にやった公式を示して「これじゃできねぇの?」とかほざきやがったからわざわざ解き直してやっている。
一番簡単な解き方を教えてやったのに、なんで簡単な方を覚えようとしない?
「…解けたぞ。」
「何が?」
…こいつ一回ぶん殴っていいだろうか。
「わざわざめんどくさい解き方で解けって言ったの泉だろーが。」
「あー、そんなこと頼んだかも。」
「…ほら、さっきのよりめんどくさいだろ。こっちだとここでこの公式使わなきゃで」
「つまりさっきのが簡単なんだろ?助かった、ありがとな。」
…人の苦労を適当に流しやがって。くそ野郎。
あの無駄な時間を返せ。
「もうここら辺でいいだろ?遅くなる前に帰れ。」
「何言ってんの。さっき遊ぼうっつったじゃん。」
「はぁ?」
「だから遊ぼ。」
ああもう意味が分からない。
誰でも良いからこいつを止めてくれ。
遊ぶってなんだ遊ぶって。
ゲームか?出掛けんのか?
「あーべ。」
「っなんだよ!」
大人なやつだと思ってたのに、付き合ってみると案外子供っぽかったこいつの対処法を一人考えている最中に投げ掛けられた呼び掛けに勢い良く振り返ると、次の瞬間には温かいものに体を包まれていた。
「阿部。」
「…遊ぶんじゃないのか。」
「遊んでんじゃん。」
「…これのどこが?」
「じゃあ言い直す。イチャイチャしよ。」
悪びれることすらない開き直り発言と同時にギュ、と力が込められた両腕に溜め息が出た。
それでも自然と泉の背中に手をまわしてしまう自分にまた溜め息。
「…しょうがないから遊んでやるよ。最初は勉強頑張ってたし。」
結局最後には折れてしまう自分が情けないけど、泉が言うところの“遊ぶ”という行為は嫌いじゃないので、(絶対泉には言ってやらないが。)泉の背中にまわした腕に少しだけ力をこめた。
そのまま少しの間体温を交換しあってゆっくり体が離れる。
阿部…という囁きについで降ってきた泉のやわらかい唇が、自分のそれと重なった。
もはや男子高校生が二人いる部屋にあるまじき雰囲気が部屋に充満している。
机の上には解かれることのない数式たちが並んでいた。
例えるならばパステルピンク
(似合わない、とか禁句だから。)
甘えんぼ泉くんが萌えです。
お兄ちゃん気質な阿部くんが萌えです。
お題配布元:heaven's blue
[back][next]
無料HPエムペ!