.
おかしいんだ。
わけの分からないモノが胸の奥でぐるぐるしている。
別に病気ではない。
それぐらいは分かる。
でも、こんなコトは初めてだ。
俺はどうしてしまったのだろう?
気にならない、ふり
カリカリと書類にサインする音だけが響く部屋。
そこに綱吉はいた。
ふぅと息を吐くと、ペンを置き、背伸びをして息抜きをする。
ズキッと痛む頭に手を当てて、天井を見上げる。
綱吉は自分の不甲斐なさを反省した。
昨日はお酒を飲み過ぎてしまった。
武がうまい酒が手に入ったから、と誘われたのが始まりだった。
予想以上においしかったため、どんどんお酒が進んでいった。
その後、隼人も来て一緒に飲んでいたことまでは覚えているが、それ以外の記憶がない。
朝目が覚めると、ちゃんとベッドで寝ていた。
誰かが運んでくれたのだろう。
そして支度をしているとツナが入ってきた。
「綱吉……昨日のこと、覚えてる?」
真剣な顔をして聞いてきたツナには申し訳ないが、全く覚えていなかった。
何かしてしまったのだろうか。
「悪い、ツナ。何も覚えてないんだ」
「そっか……」
「俺、何かしたのか?」
「…うんん、何もしてないよ」
そんなやり取りをしてツナとの会話は終わった。
今ツナには会合に行ってもらっている。
最後部屋から出ていく時のツナの元気のない顔が忘れられない。
……ほら、またきた。
胸の奥から生まれたそれは身体中に染み渡る。
この感じを何て表現すればいいのか分からなくて困る。
分かれば対処法が見つかるかもしれないのに。
痛む頭を机にうつ伏せる。
サラリと髪が顔にかかって邪魔だが、直す気にならない。
でも、この感じは昔からあった気がする。
いつからなのかは考えてみても全然分からないが。
目を閉じるとツナの笑った顔が思い浮かぶ。
子供の頃、いつも俺の後ろにくっついていた弟。
何よりも大事な弟。
その弟を守りたい一心で生きてきた。
だからこそ、勉強もリボーンの修行も頑張ったのだ。
けれど、今はもう俺の助けはいらないほど成長した。
兄として喜ぶべきなのだろう。
いや、喜ぶべきだ。
勿論、弟の成長は嬉しかった。
嬉しかったが、寂しさもどこかで感じていた。
今では立派なボスとなったツナ。
ツナに想いを寄せる奴も多い。
――ツナは俺のなのに。
ふ、と出てきた言葉。
その言葉を掻き消すように、伏せていた頭を振る。
振った際に頭が痛んだが構わなかった。
俺は何を考えてるんだ。
ツナは誰のモノでもないのに。
そこまで考えると、ツキンと胸に痛みが走る。
胸のぐるぐる感は消えるどころか息苦しさすら感じる。
苦しくて、切なくて、息苦しいのに何だか甘い。
こんな気持ち知らない。
学校で教わらなかった。
本にも書かれてなかった。
誰かに聞けばいいのかもしれない。
だが、これは聞いてはいけないような気がする。
もう今日はやることやって、早く寝よう。
いつかこの気持ちが何なのか分かる日が来るまで、大切にしまっておくことにする。
あぁ、でも無性にお前に会いたいよ。
――ツナ。
無料HPエムペ!