キミの行動に翻弄させられてばかりのオレ。

だけど、しょうがないよね。
それが惚れた者の運命なんだもん。


でもさ、それはないんじゃない?










ねぇ、勘弁して












夜、会合から帰ってきて、いつものように執務室へと繋がる長い廊下を歩く。
綱吉のいる部屋へと。
そう考えるだけで自然と頬が緩む。



漸くたどり着いた部屋の前。
朝から綱吉の顔を見ていないから、綱吉欠乏で話し合いは集中出来なかった。
そんなことを言えば、家庭教師様の相棒が火を吹くことになるだろう。
そこまで考えて今度は苦笑いが漏れる。

パチンと頬を軽く叩き表情を戻す。
ドアノブを捻り、中へと入る。
しかし、期待していた人物は机にはおらず、ソファーにもいない。



「どこ行ったのかな?」



きょろきょろと辺りを見回していると、後ろからいきなり衝撃がきた。
ぐへっ、と低い呻き声をあげて、倒れそうになる体を堪える。
何だろうと思い、後ろを見てみると今まさに探していた綱吉がいた。



「つなぁ〜〜」



間延びした、拙い言葉遣いで抱き着いてきた綱吉に目が瞬く。
目の前の出来事に頭が処理できず呆然としていると、スーツに顔を埋めていた綱吉が見上げてきた。



「つな、おかえり〜」



ふにゃっと滅多に見せることのない満円の笑みを浮かべ、ギュッと抱き着かれる。


本当にどうしてしまったのだろう。
骸の幻覚かな?

そう思っていると、アルコールの匂いが漂ってくる。



「綱吉…酔っ払ってるの?」


「よっぱらっれないもん」



目がトロンとしている。
呂律も回ってない。

大きく溜め息をつき、お酒のせいで頬を少し赤らめ甘えてくる綱吉を少し離す。
それはツナ自身のためにも。
そして、綱吉自身のためにも。


これ以上直視していると理性を保っていられる自信がない。
そのために視線をずらし、綱吉の体を離したというのに、不満そうな表情をして覗き込んでくるのは綱吉。



「なんれ? おれのコトきらい?」



綱吉は今にも零れそうな程目に涙を溜めていた。
ツナでさえあまり見たことのない綱吉の涙。
破壊力は抜群だった。

手が出そうになったツナだったが頑張った。
それはもう今までにないくらい頭をフル回転させて。


嫌い?
まさか!
答えなんて決まっている。



「好きだよ」



いくら愛を口にしても、綱吉には伝わらない。
いつものように家族愛として受け取るだろう。
それでも言いたかった。

そう思っていると、ふにゅっと温かいものが唇に触れた。



「……――えッ!」



何が起こったのか理解した頃には、既に綱吉は夢の中に旅立っていた。
勿論、ツナに抱きついたまま、満足そうな顔をして。








「はぁ〜〜」



寝息を立てて、ベッドでぐっすり寝ている綱吉の横でツナは溜め息を零す。



「綱吉……期待してもいいってこと…?」



綱吉の髪を撫で、ぽつりと呟いたツナの独り言は誰の耳にも届くことなく、消えていった。








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