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かじかむような寒さの中で綱吉は目的もなく歩いていた。


行く場所もない。
誰も知らない。
見たことのない風景。

イタリアに住んでいたのに、屋敷を出ることさえ出来なかった綱吉には初めての外だった。



「……どうしようか」


歩くことに疲れ、森の中で木に寄り掛かり、しゃがみ込む。
いっそのこと、このまま……。
誰も悲しむ人など、この世にはいないのだから。
そう考え、身体から力を抜いていき、ゆっくり目を閉じる。

数分もたたない内に綱吉は意識を手放していた。
















浮かぶ意識の中で綱吉は、暖かい物に身体が包まれていることに気付く。


瞼を開けると、見知らぬ部屋。
手にびっしりついて、固まって黒くなっていた血も綺麗に洗い流されていた。




「おっ、気が付いたか!」


突然現れた人物に綱吉は瞬く。
それを気にもせず、その男は話を続ける。


「びっくりしたぜ! 森の中歩いてたら人が倒れてるんだからな。
あっ、俺の名前は三浦秀。よろしくな」


手を握られて、人の暖かな体温が伝わってくる。
呆然としていると、秀が顔を覗き込んできた。
それに漸く気が付いた綱吉はパッと手を離す。



「俺の手……汚れてるから、触らないほうがいい…」



手は綺麗になってはいるが、綱吉には汚れたものに見えた。
勿論言葉の意味に気付いた秀だったが、再び綱吉の手をとる。


「大丈夫、汚くなんてない。
なぁ、よかったら何があったのか話してくれないか?」



そんなことを言ってくれる人がいなかったせいなのか。
それとも、久しぶりの人の温もりを感じているせいなのか。
綱吉には分からなかったが、この人ならという気持ちが湧いた。





綱吉は今まであったことを何もかも吐き出した後、恐る恐る秀の顔を伺う。
すると、ギュッと力強く抱きしめられた。
何をされているのか、いまいち理解できていない綱吉はされるがまま。
ハテナマークを浮かべていると、秀が口を開いた。


「……綱吉、俺と一緒に暮らさないか?」


「えっ!! でも…」


「行くとこないんだろ? 俺とは嫌か?」


無意識に綱吉は首を横に振っていた。
嫌な訳がない。
話していても分かるぐらい目の前の男は優しく、
一緒にいるだけで心が温かくなる。




綱吉はこの時、この男と過ごすことを決めたのだった。








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