過去




俺は4歳のとき、突然イタリアに連れて来られた。


近くに父親も母親もいない。
代わりにいたのは偉そうな顔をした、しわのある男達とお世話係の人だけ。




『お父さんとお母さんはどこ?』

何回も聞いた疑問。
広い部屋の隅っこに座り、綱吉は毎日のように泣いていた。
綱吉がどんなに探しても、どんなに呼んでも、決して現れることはなかった。




成長するにしたがって泣くこともなくなり、その質問もしなくなる。
しても意味がないと分かったから。



捨てられた。
それが綱吉の出した答え。


徐々に曖昧になり、思い出せなくなる父親と母親の顔や温もり。

感情を表に出すこともなくなり、一人屋敷の中で綱吉は育っていった。





綱吉が8歳になり、髪も肩につくぐらいにまで伸びた。


ある日、綱吉は男達に呼ばれ部屋に入る。
すると、男達は自分達がボンゴレの重役であること。
日本には綱吉の両親と双子の弟がいること。
そして、二人共ボンゴレの次期十代目候補であることを聞かされる。


正直
、弟がいることに驚いた綱吉だったが、特に興味も湧かなかった。





しかし、それからが地獄のような日々の始まりだった。

ドンに相応しくなるために森の中の屋敷に連れていかれ、死ぬかと思う程の修業。
それが終われば、何時間も続く勉強。


数日で心身共に疲れ果て、綱吉はそこから逃げようとしたが、運悪く見つかり、部屋に閉じ込められる。




修業・勉強の繰り返し。
それ以外は何も許されない。
外に出ることさえも。

いつも見える景色は同じ、森の木々ばかりだった。



どうして俺だけ、と問いただすと、

『同じ所で、同じように育てても意味がない。
二人いるのだから、別々の性格を持つドンが欲しいのだよ……ボンゴレの発展には。
お前は黙って言うことを聞いていればいいんだ』



表情を全く変えず、言い放たれる。
その言葉に溜まりに溜まっていた怒りが弾けた。







気が付くと手は真っ赤に染まり、屋敷はボロボロ。
傍には元が人だったのか分からない程、黒く焼け焦げた物体がたくさん落ちていた。


未だに燃え続けている屋敷の炎をただただ見続けていた。

その瞳は緋色に染まり、何の感情も感じとることは出来ない。
その後すぐに逃げるように綱吉はそこから立ち去った。





それは綱吉が12歳の冬の日の出来事だった。








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