ピンクのファレノプシス




綱吉が部屋に入ると、机の上には見たことのない花。


何故花が机に?
昨日までは何もなかったはずだ。
母さんが置いたのを忘れてしまったのだろうか。



綱吉は一人その花を見て考える。
鮮やかな可愛らしいピンクの花びら。
可憐であどけなく見えるその花は、綱吉の想い人――ツナを思い浮かばせる。



ツナが笑えば、周りも笑う。
そんなツナの笑顔を守るためなら、綱吉はどんなことでさえ出来た。
否、これからもしていくつもりだ。


綱吉の世界は、いつの間にかツナ中心に回っていた。
ツナがいなくなれば、その世界は崩壊してしまうだろう。
それ程に、綱吉はツナに依存していた。


甘やかし過ぎる、と周りからは言われるが関係ない。
それに今ではツナは、ある程度のことは一人で出来るようになった。
兄として弟の成長は嬉しいことでもある反面、寂しいことでもある。




どれくらい考えに耽っていたのか、トントンと階段を上ってくる音がする。
ガチャっと音を立てて入ってきたのは、今まで思い浮かべていた相手、ツナだった。


「ツナ、これ何だか知ってるか?」


「えっと…それ、オレから綱吉へプレゼントなんだ」



えへへと顔を少し赤らめながら可愛らしく笑うツナ。
その言葉に驚いて目を見開いたが、次の瞬間には抱きしめたい衝動に駆られた。
だが、それはまずい。
さすがにばれてしまうだろう。
心の中の本当の気持ちが。
ばれて嫌われでもしたら、もう生きていけない。
だから今まで『好き』の二文字が言えなかった。



「ありがとな」

そう言って笑いかけながら頭を撫でる。
せっかくのツナからのプレゼントだ。
花瓶にいれないと。

花を持って綱吉は下におりる。
花瓶をもらうために、キッチンにいる母親に声をかけた。


「母さん、花瓶欲しいんだけど」


「あら、綺麗なファレノプシスね」


「ファレノプシス?」


「ツー君の持っている花の名前よ」


聞き慣れない言葉に綱吉は首を傾げる。
そんな綱吉に笑いかけながら花を指差す。


「それにしてもツー君ったら、モテるのね」


またしても意味の分からない事を言われる。
今度こそハテナマークを飛ばしていると、母さんから不思議そうな顔をされた。



「だって、ピンクのファレノプシスの花言葉は――」



それを聞いた途端、綱吉は母親にお礼を言うと階段を駆け上がっていった。





バンっと勢いよくドアを開けると、その音にびっくりしているツナがいた。そのままの勢いでツナを抱きしめる。



「つ、綱吉!?」


中で、もぞもぞ動くツナを離さないように力を込める。
そして、耳元で呟いた。


「ツナ…あの花の花言葉、知ってる?」


すると、ツナは驚いて顔を上にあげる。
その顔は林檎のように赤く染まっていた。
それを見れば誰もが肯定ととるだろう。
同じ気持ちでいたことが分かると、にやける顔を隠そうともせず、綱吉はツナを見つめる。



「あ、あれは…!」


あー、うー、と呻き声をあげて慌てるツナを見ているのもいいが、今は言わないといけないことがある。
今まで言えなかった言葉を。


「俺もツナのことが好きだ」


「…えぇえっ!! ホントッ?! 本当に好き?」


「お、おお…」


凄い勢いで聞いてくるツナに少し押されながらも何とか答える。


花、あげてよかった〜。
そう言うツナに小さなリップ音を立てキスを贈る。
すると、ツナは色付いた頬を更に染める。
その様子に、綱吉は満足気に微笑んだ。





今ツナにあげたい花があるんだ。
『あなたに愛されてしあわせ』って花言葉の花を。




〜fin〜


ピンクのファレノプシスの花言葉

『あなたを愛してる』





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