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第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の3

 両親――特に、父親が厳しい。

 だが、いつかは――

 イリアは、自分自身に気合を入れた。

 その時、携帯電話が鳴った。バイブ機能に設定していなかったので、周囲に着信音が響く。

 メールが、受信したのだ。

 イリアは慌てて携帯電話を取り出し、送信者の名前を見る。表示されていたのは、ソラの名前だった。

(何だろう)

 てっきり、時間を置いてメールを送ってくると思っていた。しかし、こんなに早くメールが送信されてきた。何かトラブルが発生したのか、それとも別の意味か――イリアは反射的に、文章を読む。


今日、18時に会える。


 短い文章だった。

 しかし、ソラが言いたいことは理解できる。

 勿論、断る理由は無い。

 イリアは嬉しそうに微笑むと、了承の返事を送る。
どのような理由で、ソラはメールを送ってきたのか。このような時、やけに妄想力が働く。

 それにより、口許が徐々に緩む。それは傍から見れば、怪しい表情。よって、行きかう人々が小声で囁く。彼等の声音が耳に入った瞬間、一瞬にして赤面してしまう。そして、逃げ出した。

 向かう場所は、駅。

 そしていい気分で、電車を来るのを待った。


◇◆◇◆◇◆


 イリアにメールを送信したソラは、音をたて携帯電話を閉じていた。薄暗い室内で、ソラはぐったりと項垂れている。まだ身体が本調子ではないのか、顔色が悪い。それは、青白ではなく真っ白だ。

 何度も、深呼吸を繰り返す。だからといって、それで気分が改善されることは無い。それどころか、更に気分が悪くなっていく感覚に陥る。その時、ソラの後方に人の気配が生まれた。相手は意図的に気配を消して近付いてきているので、ソラが気付くわけがなかった。

 しかし、静寂の中に足音は響く。

 よって、ソラは反応を示した。

 だが、言葉は出さない。

 ただ、相手を凝視する。

「気分は、どうかな」

「……普通」

 やっとの思いで、言葉を吐き出す。相手のことが気に入らないという意味合いと、身体が気だるいので、吐き捨てるような声音となってしまう。無礼な態度であったが、相手は普通に振舞う。

 ソラの側にやって来た人物――ユアンは、ソラが自身を嫌っていることを、前々から知っている。だからといって、動揺することも無い。立場的に、自分の方が優位だとわかっているからだ。

 力を持つ者は、カイトスの助けが必要。

 それに彼等がいるので、普通に生活が送れる。

 ユアンは無言で、ソラにそれらを伝える。

 一方のソラも、そのこと身を持ってわかっている。差別は、日常茶飯事。特に、罵倒が一番堪える。しかし精神的に強いので、何とか耐えている。だが、限界が近いのも確かだった。

「誰に、メールをしていた」

「誰でも、いいじゃないですか」

「気になる」


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