第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の2
想いは、募る。
いつか。
そう、いつか。
どれくらいの年数掛かるか不明だが、それを願う。
イリアは携帯電話とバックを持つと、一階へ降りていく。そして、母親が用意した朝食を黙々と食べる。
両親は、喜んでいた。アカデミーを留年せずに、卒業できるのだから。それに、就職先が大きい。
多くの科学者が、望む場所。
その場所に、娘が就職した。
両親は、鼻が高い。近所に、自慢ができる。
娘の就職先は、両親の地位と立場を向上させる道具に過ぎない。
言葉として明確に言うことはしないが、両親が漂わせる雰囲気でイリアは心の中を読み当てる。
綺麗に焼けているトーストにマーガリンを塗ると、一口齧る。途中、イリアは上目使いで父親の顔を見詰める。父親は、口許を緩めていた。それだけ、卒業と就職を喜んでいるのだ。いつも厳しい人物が――内心、複雑な心境であった。そしてますます、不信感が強まる。
自分達にとって、子供は飾り。
自身の立場を良くする為の道具。
無論、考えてはいけない方向に思考が働いてしまう。しかし両親の行動を見ていると、そう思ってしまう。
黙々と、トーストを齧る。
その間、会話は無い。
イリアは大口でトーストを食べていくと、ミルクを飲み干す。その後、歯を磨きに向かった。
早くアカデミーに行きたい。
クラスメイトに会いたい。
それらの感情が、イリアを突き動かす。
イリアは椅子に置いてあったカバンを手に取ると、軽く両親に言葉を言い玄関から外へ出た。
一般的に卒業式というものは、両親が参加することが多い。しかしイリアの両親は、卒業式に参加することはしない。それには、卒業式の後の開かれるパーティーが関係していた。
両親が参加しても、一緒に帰宅はできない。それなら、最初から来ない方がいい。それが、イリアの表面上の考え方。しかし、裏側は違う。本音の部分では、来ないで欲しいのだ。
今回、断った。
勿論、両親は気付いていない。
振り返り、自身が暮らしている家を見詰める。
卒業後、憧れの場所に就職し、憧れの職業に就き学ぶ。それは、願ったり叶ったりであった。
ふと、イリアの脳裏にひとつの内容が思い浮かぶ。カイトスとして本格的に仕事をはじめた場合、滅多に家に帰ることができない。それに遅い時間になってしまうと、交通機関を利用できなくなってしまう。それなら、研究所の近くに建てられている賃貸マンションを利用してもいい。
彼女自身、就職をしたので一人で暮らしたいと思っていた。その方が、両親に気兼ねしなくていい。
それに――
仕事の他に、プライベートが縛られない。
例の一件から、イリアはソラの身体を心配している。また、血を吐いて倒れていないか。きちんと、食事をしているのか。一人で暮らしているので、過度に心配してしまう。よって、イリアは一人暮らしを望む。しかし、なかなか両親に切り出せない。そう、切っ掛けが掴めないのだ。
[*前へ][次へ#]
[戻る]
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!