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第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の6

 イリアは、抜いた草をゴミ箱の中に捨てていく。それを見ていたソラは「土を落とせ」と、言う。そう、草の根っこの部分には大量の土が付着していた。気が利く人物の場合、勿論土を落としてから捨てる。しかし園芸経験のないイリアは、土と共に草を捨てようとしていた。

「ご、御免なさい」

「いいよ。ほら、叩く」

「う、うん」

 ソラに促されるように、パタパタと土を叩いていく。そして全ての草をゴミ箱の中へ捨てていった。

「これで、どうかしら」

「有難う」

「手、洗ってくるわ」

「台所は禁止」

「了解しました」

 そう言い残すと、イリアはそそくさと奥へと向かう。一方ソラは、盛大な溜息をついていた。そう、ソラはゴミ箱の中へ視線を向けていたからだ。イリアが誤って捨ててしまおうとした土は、独自の配分で作り上げた観葉植物専用の土。勿論、専門の店で購入した物だった。それをゴミ箱に捨てようとしていたイリアは、ある意味で逞しく世間知らずだった。

 イリアの自宅には、小さいながらも庭が存在している。そのような場合其処から土を拝借し注ぎ足せばいいが、ソラの場合それができない。故に、植物を育てるのにもお金が掛かってしまう。

 それに――

「これでいいと思っているのが凄いよ。やっぱり、イリアは何かが足りないのかもしれない」

 大雑把に草を抜いた影響で、鉢植えの中には複数の穴ができていた。それにより、数本の観葉植物が横に曲がっている。それを見ても何とも思わないイリア――ソラは、ガックリと項垂れる。一部から「お嬢様生活の影響」と言われているらしいが、案外それは正しい。

「やっぱり、やらせたのが間違いだった」

 これからイリアの頼みごとは、無報酬で行うのが一番だとソラは実感した。何かを行ってもらった場合、倍以上の後始末が待っている。現に、後で鉢植えの中に土を足さないといけない。そして数本は土から全て変更し、新しい鉢植えに植え替え。そうしないと、枯れてしまう。

 しかし、それは今ではない。

 何より、イリアに菓子の作り方を教えないといけなかった。

 再びソラは、道具を探していく。そして目的の物は、やはり奥の方へ仕舞っていた。それを取り出したソラは丁寧に洗っていくと、戻って来たイリアを横に立たせ、説明をしていった。




「これくらい?」

「うん? ああ、それでいいよ。で、これで綺麗に振るっていく。そうすると、綺麗な砂糖に変わるから」

「うん」

 そう返事を返すと、イリアは言われた通りに進めていく。意外に、手馴れた手付き。それに驚いたソラであったが、所々に不器用な部分も垣間見る。しかしそれは、初心者だから仕方がない。

 イリアが懸命に砂糖と格闘している横で、こぼれてしまった砂糖を拭いていくソラ。サポートは、完璧だった。

「できたわ」

 その言葉と共に、さらさらに変化した砂糖が入ったボールを目の前に突き出す。彼女自身懸命に頑張ったのか、嬉しそうに微笑んでいる。このようにしていると、実に女の子らしい。だが普段のイリアは、研究中心で動いている。そして下手したら、グロテスクな生物を鷲掴み。


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あきゅろす。
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