[携帯モード] [URL送信]

第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の5

 それは、女性差別。

 内心、ソラは「女性差別」という言葉が、嫌いで仕方がなかった。現在、女性も男性と同じようにバリバリと働いている。無論、彼女達は自身を男性と同等に扱ってほしいと言っている。

 しかし――

 時折、女という性別を盾に取る。言葉で「差別は禁止」と言っていながら、都合のいい時は女を演じる。そう、今のイリアと同じ。だからといって、女を否定しているのではない。ソラは過去に、そのような女性を多く見てきた。それにより、必要以上に構えてしまう。

 それを考えると、タツキはいい方だ。「女性」という性別を盾に取らず、生活を送っている。ソラにしてみれば、其方の方が清々しい。それに研究所に勤めていた時、高い実績を出している。

 言葉だけを述べ自分から動こうとしない人間は、実に質が悪い。そして、自己主張の激しいのも考え物だ。

 無論、それ相応の努力をしているというのなら話は別であるが、努力もしないで騒ぎ続けるのは以ての外。

 イリアは、この言葉をどのように思っているのか。それを聞いたことは一度としてないが「女だから」ということを前面に出して、動くということは見られない。それにイリアが置かれている状況を考えていると、それを言うのは間違っている。そう、あの世界は実力主義。

 ソラは、ホッとしていた。

 そう、イリアにはそのようになってほしくなかった。

 一方で、見た目の部分で、イリアは懸命に磨いている。化粧方法の変化と、質のいい化粧水とクリームを使用しているという。金銭が厳しいといいつつ、無理して最新の流行ファッションを取り入れているらしい。確かに、見た目の観点で評価していけばレベルは上がった。

 しかしそれが、無理をしているという証明にもなっていた。着飾って、懸命に外見を良くしていく。
まるで、愚の骨頂。

 一体、何がしたいのか。

 ソラは、理解し難かった。

(女って――)

 外見と内面のアンバランスな状況に、ソラは肩を竦めてしまう。そして何故、其処まで外見に拘るのか。イリアは、何処か踊らされていると思ってしまう。ソラ自身、イリアはイリアのままでいい。コテコテに化粧をして素顔を隠してしまうより、素肌を見せる方が何十倍もいい。

 それに――

 ふと、そのような考え事をしていると、イリアの声が響いた。

「ねえねえ」

「一回でいいよ」

「だって……」

「近い距離で、声が聞こえないわけがないだろう。それに、老人性の難聴は年齢的に早過ぎ」

「……うん」

「で、何?」

「抜いた草は、どうすればいいの?」

「一箇所にまとめておいて」

「それなら……」

「土の中は禁止!」

 間髪を容れずに、ソラは突っ込みを入れた。確かに、土の中に草を埋めておけば腐って栄養になるだろう。しかし腐葉土という専門の肥料を使用しているので、今回はその必要はなかった。ソラは、イリアのもとへゴミ場を持っていく。そして、この中に捨てるように促した。


[*前へ][次へ#]

5/27ページ

[戻る]


第3回BLove小説漫画コンテスト開催中
[小説ナビ|小説大賞]
無料HPエムペ!