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第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の4

 イリアは、物事を多方面で観察していくだけの視野を有していない。それが、致命的な欠点だ。現にイリアは「馬鹿は嫌い」と、に同調している。彼女は、典型的な知識先行型だった。

 無論、一目でイリアの本質を見抜いてしまう。流石、若くして高い地位に就いているだけあった。ユアンの出会ってきた人物の中でイリアは、小物だ。いや、それ以下の人物に等しい。

 彼女の人生経験は、砂糖菓子のように甘い。それを聞いた彼女は激辛と表現するだろうが、ユアンはそれを否定していくだろう。本当に激辛の人生は、言葉に表現することが難しい。

「ラドック博士も、そうなのですか?」

「そうだね……部下は、仕事ができる方がいい。僕達の仕事は、忙しいことが多い。溜めたら、地獄だ」

「私も、そうなるのですね」

「最初は、別の意味で忙しい」

 その言葉に、イリアはハッとなってしまう。そう、新人がはじめにしないといけない仕事は雑用だ。無論、男女は関係ない。何事も、男女平等。全員が、同じように苦労していく。其処に「女性だから」という言葉は不要。現にカイトスの世界は、努力と結果が物を言う。

「苦手?」

「体力は……低いです」

「普通、女性はそうだ」

「中には、強い方もいます」

「ランフォード君も、何れはそのようになるかもしれない。彼女達も、最初はか弱い女性だった」

「そうなのですか!」

 新人の雑用は、多岐に渡る。勿論それに付いて行けない人物は、早めに転職を考えた方がいい。本格的にカイトスとして仕事をはじめた場合、雑用以上の厳しい仕事が待っている。

 新人を適度に振るい落としていく。その為、新人達は目的の場所に就職できたからといって、安心していたら痛い目に遭う。このことに関して厳しい現状と嘆く者も多いが、研究の内容が内容。簡単に、構えていいものではない。逆に簡単に仕事をしたいのなら、別の職を選ぶしかない。

 イリアは、どうか……それは、今後の仕事の仕方で判断することができる。しかしイリアは、カイトスの道を選択した。簡単に、弱音を吐いてはいけない。それに、彼女は宣言している。その為、イリアは驚きの表情を浮かべてしまうも、それが決められた役割だと受け入れる。

 しかし、次の言葉にイリアは過敏に反応を示してしまう。これこそ、女性にしては一大事の問題だ。

「毎日、徹夜をやっている」

「……は、肌が」

「肌?」

「……荒れます」

「ああ、そうか」

「カイトスとして仕事をするのに、肌のことを気にしているのはおかしいですね。ですけど……」

「わかっている」

 若い女性に限らず、一般的に彼女達は肌の肌理と張り心配してしまう。長く、若く美しい肌を保っていきたい。それは、永遠の悩み。それにより、肌の手入れに時間と金を費やしていく。イリアは今、エステに通ってはいない。しかし給料を得れば、肌の手入れに金を投資する。

 それは一体、誰の為か――勿論、それは決まっていた。イリアは、ファンクラブの会員の一人。そう、ユアンに気に入ってもらい為だ。外見を懸命に磨いていき、ユアンに振り向いてもらう。しかしその対象の人物ユアンは、苦笑いを浮かべている。要は、呆れていたのだ。


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あきゅろす。
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