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第二章 揺らぐ心、不確かな絆
其の6

 しかしそれはタツキの身体のことなので、クリスには関係ない。だが、腐れ縁のような仲の二人。やはり、相手の健康状態は気になってしまう。それに、そのようになってしまったら切ない。

「好き嫌いは?」

「特にないわ」

「それなら、適当に作る」

「それなら、アタシは――」

「いや、断る」

 ソファーから腰を上げると、料理の手伝いを行おうとする。しかしクリスは、それを丁重に断った。下手な手出しは、食べられるものも食べられなくなってしまう。それに、味付けの問題もあった。

 何ら躊躇いもなく断られたことに、タツキは腹を立ててしまう。どうやら今回はやる気だったらしく、どうしても手伝いたいという。しかし、クリスにしてみたらいい迷惑。それ以前に、タツキにはやらなければいけない仕事が残っていた。それは、掃除と洗濯である。

「洗濯は、あれで終わり」

「なら、掃除は?」

「ゴミを捨てるだけね」

「それ、本当か?」

「疑り深いわね」

 綺麗に掃除をしていると言わんばかりの態度に、クリスは肩を竦めていた。そして自身もソファーから立ち上がると、近くに置かれていた棚の四隅に指を這わす。その瞬間、一筋の道が生まれた。

「汚いな」

「この部屋は、最近掃除をしたわ」

「いや、最近というレベルじゃないな」

「別に、構わないわ」

「そ、そうか」

 降り積もった埃から判断できるのは、一ヶ月近く掃除を行っていないということ。埃はアレルギーの原因となってしまう。他人を診察する前に、身の回りの掃除を行わなければいけない。クリスはそのことを注意すると、珍しいことにタツキは素直に従う素振りを見せた。

 いつもなら間髪を容れずに反論してくるはずだが、今日に限って大人しい。どうやらこのことに対し自覚を持っているのか、タツキの額には汗が滲み出ていた。女性は女性らしく。そのように言うと流石に怒り出してしまうが、今のタツキにはこの言葉は当て嵌まっていた。

 女性として生きているのなら、身の回りの整理整頓くらいは――いや、これは女性以前の問題だ。

 このような汚い部屋での生活。クリスは、すぐに根を上げてしまう。掃除をする暇がなければ、誰かを雇って掃除をしてもらえばいい。その方が、体力を消費しなくていいものだ。

 だが、タツキ曰く「お金が勿体無い」らしい。しかし、ケチっていい部分と悪い部分がある。そのことをわかっていないタツキであるからこそ、このような汚い部屋で生活をすることができる。

「ひとつ質問していいか」

「何かしら?」

「結婚……する気は?」

 どのような意図を持って、そのような質問を投げ掛けたのか。当初タツキは、突然の内容に固まってしまう。しかし冷静に考えてみれば、タツキにとってはこれ以上ない面白い内容であった。その為、徐々に口許が緩んでいく。そして、最終的には大声で笑い出してしまう。


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