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第一章 異端の力
其の5

 長く付き合っていく上で、外見を重要視するのは一時期だけ。それは、いつまでも外見が一緒である保障がないからだ。時間の経過と共に変わっていき、最終的には別人となってしまう。

 だからこそ、外見より中身を大切にしないといけない。それに、相手を思いやる心も必要だ。無論、カディオはそれを持っている。現に力を持つソラに偏見を持たず、普通の友人として付き合っている。

「直さないといけないのか?」

「いけないね」

「まあ、最近厳しいよ」

「そんなことはないさ。ただ、友人が幸せになってくれると嬉しい。特に、お前の場合がそうだ」

「おっ! それは、嬉しいな。よし! 頑張って良い男になるぞ。しかしワイルドなところは、俺らしい」

 そこだけは譲れないのか、カディオはソラに詰め寄ると改善点に対して文句をつけていく。しかし、その「ワイルド」な一面を直さなければ、全てははじまらない。そのことを説明していくも、聞いてはくれなかった。それどころか、ワイルドの素晴らしさを語りだす。

「もてなくていいんだ」

「それとこれは、別問題」

「いや、一緒だよ。大勢の人間から、お前のその部分が嫌いだと聞いているし。何て言うか、汚らしい。其処を直せば、可能性が出てくると思う。もてたいのなら、拘りは捨てるべきだね」

「その情報を、何処で手に入れた」

「噂だよ。でも、本当かもね」

 笑いながら話すソラであったが、カディオの顔は真剣だった。自分が一番のチャームポイントを否定され、正常でいられる者はいない。カディオはその場で崩れ去ると、肩を震わせ泣いていた。

「そんなに、否定するなよ」

 タフで鈍感――という言葉が似合うカディオがへこむ姿に、ソラは何も言えなくなってしまう。多少の毒攻撃であろうとも、普段なら平気な顔をして跳ね返す。しかし、今日は違う。いつものノリ程度の毒攻撃であっても、心を引き裂き乙女のようにシクシク泣いてしまう。

 このような姿を見ていると、普通は相手に対して同情心が湧いてくるもの。しかしソラの心には、それが湧いてこない。考え込みその理由を見付けようとするも、明確な答えを見つけることはできなかった。カディオだから――失礼ながら、この言葉で片付けることはできた。

「いや、ソラの言う通りかもしれない。過去の女を引きずるなんて、女々しい男のやることだよな」

 その台詞の一部に、適切でない言葉が含まれていた。そのことに気付いたソラは項垂れ、大きな溜息をつく。「過去の女」その単語にいつ付き合ったのかと心の中で突っ込みをいれると、徐に立ち上がる。

「何?」

「私用だよ。だから、話を進めていいぞ」

 しかしソラの行動が気になるのか、会話を続けようとはしない。視線でソラの動きを追い、時折「ほへ」と、言葉を漏らす。何ら意味の含まれていない言葉の数々に、ソラは渋い表情を作るも特に反論はしなかった。

 これもいつものこと。そう自分に言い聞かせたソラは、パソコンの電源を入れると椅子に腰掛ける。これから行うことは、メールチェック。中にはプライベートな内容も含まれていたりするが、カディオに見られて困るものではなかった。それに、変に隠すと逆に怪しまれてしまう。

「何か、面白いメールはあるか」

「別に、何もないよ」


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