第一章 異端の力
其の4
ふられた――これから話そうとしている内容を一言で表すと、このようなものであった。カディオは好きだという相手に、勇気を出し告白しようとした。結果は、見事に玉砕。なんでも、告白をする前に横取りをされたという。それも絶妙なタイミングで。お陰で話しかける前に、相手を失った。
他にも同じ考えを持っている人物がいたとは、カディオにとってそれは予想外。はじめからそのことを知っていたとしたら積極的にいっていたというらしいが、果たしてそれでも上手くいっていたか。
玉砕したことに同情心を持つことができるが、何せ相手はカディオ。可哀想だという気持ちより、ソラはおかしかった。お陰で、語られる内容に大笑い。どうやら、予想通りの内容がおかしいようだ。
「わ、笑うな」
「いや、見事としか言いようがなくて」
「何だよ、さっきは俺を脅していたくせに」
少しは真剣に聞いてくれると思っていたカディオであったが、ソラの冷たい反応にフンと鼻を鳴らし、横を向いてしまう。滅多に見ることのできない、拗ねたカディオ。しかし、可愛らしい一面を生み出す。頬は、膨らませてはいない。だが、ソラにとっては面白かった。
「俺を貶すな」
「貶していないよ。ただ、面白いだけ」
真顔に近い表情で答えてくるソラに、カディオは何も言えなくなってしまう。それは、身の危険を感じたからだ。この場で力を使ってくることはないだろうが、ソラの恐ろしいところは力だけではない。
人体の急所をついた攻撃――アカデミーで行われたことをこの場でやられたら、カディオに勝ち目はない。腕力でいえばカディオの方が強いが、急所攻撃となったらソラには敵わない。
「お前に、話すんじゃなかったよ」
「どちらにせよ、結果は聞いていたよ」
「そうだよな……」
ソラに「好きな人物がいて、告白する」と言っている時点で、結果を報告しなければならない。言わなければよかったと激しく後悔するも、それは後の祭り。良き友人関係という思いが、仇になった。
「でも、その彼女が幸せならいいじゃないか」
「まあ、そうだけど……」
「未練があるんだな」
ふられたというのなら、ここは潔く諦めるしかない。彼女のこれからの幸せを願い、影で見守っていく。という方法を取りたいカディオであったが、未練が邪魔し思考が上手く働かない。
「どうしたらいいんだ!」
自分のそのような性格を改善したいと思っているのか、カディオは大声を張り上げながら立ち上がると、ソラの目の前まで歩いて行く。そして両手を肩に乗せると、ソラの身体を思いっきり横に振り出す。その目はいつになく真剣で、ソラに答えを述べるように催促する。
「どうしてほしい?」
「もてたい」
「なら、オレが言うことを聞くか?」
「も、勿論!」
カディオの素直な反応に、ソラはコホンと咳払いをする。そして、問題点を淡々と冷静な分析を付け加えながら話していった。非情とも取れる分析結果にへこんでしまうカディオであったが、ソラは止めようとはしない。
これらの改善を行っていかなければ、カディオは素敵な彼女を作ることはできない。いやそれ以前に、近寄ってこない。奇跡的に作れたとしても、相手は性格面で幻滅してしまう。外見より中身が重要。カディオと付き合えば、そのことを気付かせてくれる。それほど、性格は最悪だ。
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