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第一章 異端の力
其の1

 清々しい朝の日差しが大地を照らし、今日という一日がはじまった。ソラは、相変わらずベッドの上で横になっている。低血圧故に、仕方がない。朝の日差しは、ソラにとっては無用のものであった。

 ふとその時、携帯電話が鳴った。このような時間帯に誰が掛けているのか。渋々ながら電話に出ると、朝から不快な声を聞いてしまう。声の主は、カディオ。しかし、この時間帯に電話をしてくることは珍しい。何かが起こった――そう判断したソラは、電話の意図を聞く。

 すると、ソラの表情が一変する。それは、馬鹿馬鹿しいと取れる内容であったからだ。この瞬間から、ソラは同情と容赦という単語を捨ててしまう。そして、思いっきり不快な声を発した。

「で、オレにどうしろと?」

 長々と聞かされた台詞の後に続いたのは、ソラの短い言葉。無論、カディオからの返事はない。親身になって聞いてくれるのかと期待していたのか、ソラの冷たい反応が意外だったらしい。

 互いの間に、沈黙が続く。

 返事を返してこないカディオにソラは態とらしい溜息をつくと、電話を切るということを告げる。その言葉にカディオは慌てて口を開くと、どうしてほしいのか懸命に訴えていく。

『ただ、話を聞いてくれ』

「愚痴は困る」

『……そ、それに近いな』

「じゃあ、直接話せ」

『お、おう』

 朝のひと時を奪い取った代償は、支払わなければいけない。よってソラは毒吐きに等しい言葉を述べていき、カディオを威圧していく。すると予想外の攻撃に、カディオは簡単に怯んでしまう。そして素直に謝りだすが、言葉の隅々に感じられるのは「諦めていない」という単語であった。

 カディオは時々、言葉と態度が一致しない時がある。それが彼の特徴であるが、困った特性であった。だからこそ、面と向かって話した方が内面を深く知ることができる。直接会うということを拒むと思っていたソラであったが、簡単に了承したということに疑念を抱いてしまう。

 しかし、それ以上の追求を行うことはしなかった。追求したら可哀想……そのように思ったからだ。それに細かい事柄は、会った時に聞くことができる。ソラは、カディオに関しての面倒ごとは嫌う。だが、互いは友人同士。困った時は、助け合わなければいけなかった。

「で、いつ会う?」

『今は、ダメか?』

「別に構わないけど」

『それじゃあ、行くぜ』

 軽い口調で、カディオは返事を返す。その瞬間、玄関のドアが物凄い音で叩かれた。一体誰が――ソラは首を傾げると、訪問者を確認する。画面に映し出された顔。それは、カディオだった。

「な、何でお前が……」

『実は、待っていたんだ』

 電話口から聞こえてくる軽い口調に、ソラは唖然となってしまう。カディオ曰く「二時間前から待っていた」らしい。もしソラが不在だった場合、その場所で長時間待つことになっていた。

 タフな一面を持っていると知っていたが、ここまでとは――ソラは二回目の溜息をつくと、ドアを開けてやることにした。するとドアが開いた瞬間、カディオの満面の笑みが飛び込んでくる。

「うわ、最悪だ」

「な、何だよ」

「お前の笑顔を見るとは、思わなかったかだよ」

 中に入るように進めつつ、毒を吐く。カディオはいつもの挨拶と勘違いをするが、ソラは本気だった。気持ち良い朝を台無しにされ、尚且つ気持ち悪い笑顔を見るとは……最悪としか言いようがない。


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