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第一章 異端の力
其の8

 それに、真剣な場面であろうと真顔で冗談を言う。本人は本気で言っているつもりはないようだが、いかんせん不真面目な部分が目立つ。これに真面目な一面が加われば、少しは信頼度が増すだろう。しかし根本的な部分が、不真面目。故に、思ったように修正が行き届かない。

「悪い悪い」

「軽いよ」

「いいじゃないか。これが、俺だ」

「まあ、そうかもしれない」

 この性格は、出会った当初と一緒だ。よって、ソラは半分諦めていた。そして、反論するのも疲れてきたのが実情であった。




 アカデミーの敷地は、予想以上の面積を有していた。建ち並ぶ建物はどれも同じような造りで、どの建物が校舎なのか外見だけでは判別できなかった。困ったソラはカディオに案内を頼もうとするが「嫌だ」と、即答されてしまう。どうやら、互いに迷子になってしまったようだ。

「来たことがあると、言っていたよな」

「あの時は、付き添いがいたんだよ。そんなことより、ソラはどうなんだ? 幼馴染が通っているんだろ」

「残念ながら、中には入ったことはない」

 早くも問題にぶち当たる二人。これもアバウトな計画がいけなかったのだろう、このまま一箇所に立ち尽くしていると、不審者と思われてしまう。やはりカディオの計画には、欠点があった。

 このままではいけないと、ソラは案内板を探しはじめる。このような広い敷地を有している場所には、必ず案内板が設置されている。それを見れば、何処に校舎があるのか一目瞭然だ。

 共に案内板を探してもらおうと、ソラはカディオがいる方向に視線を向ける。その瞬間、ソラの怒鳴り声が響き渡った。何とカディオが、アカデミーの女子生徒をナンパしていたのだ。

「素敵な女性を見かけたから、ついつい」

「……何処かで聞いたような台詞だな」

 ソラの怒りの形相に驚いたのか、女子生徒は身体を震わせながら怖がっていた。おどおどとした態度でソラとカディオを交互に見ると、急に悲鳴を上げその場から立ち去ってしまう。

 その後姿に声を掛けようとしたソラであったが、女子生徒の姿は遥か彼方にあった。その時、周囲からひそひそ話が聞こえてくる。見れば、アカデミーの生徒が二人の噂話をしていた。

「……お前の所為だ」

「俺は、感情のままに動いただけだ」

「それが、余計なんだよ」

 これにより、完璧に不審人物だと思われてしまった。多分「怪しい人物に声を掛けられた」と、報告されるだろう。こうなれば、捕まったも同然。しかしカディオは、全く気にしていない。

「捕まったら、お前を売ってやる」

「そ、それはないぞ」

「原因を作った奴が何を言う」

「まあ、そうだけど」

「自覚があるのなら、大人しくしていてほしい」

 いつものカディオであったら簡単に片付けてしまうが、今回は違う。「不審者として捕まった」と通報されてしまったら、上から何を言われるか。軽い処分で済めばいいのだが、何かと厳しい職場。後々が恐ろしい。何より軍は、規律を乱す者を嫌う。よって処分は、重いものになる。


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あきゅろす。
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