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第一章 異端の力
其の6

「意味不明な行動が多いのよ」

 二人の会話を聞いていたのか、同じように卒論を書いていたクラスメイトが横から口を挟む。その妙に説得力がある言葉に、周囲にいた全員が頷いた。この言葉で全てを表せるというのは、ある意味で凄いとしかいいようがない。だが逆に、単純という意味合いも含まれていた。

「そんな暗い話はそこまでにして、少し休憩しない」

「賛成! もう疲れた」

 大きく伸びをし、凝り固まった肩を叩く。長時間パソコンと睨めっこをしていると、全身が疲れてしまう。イリアも休憩することに賛成すると椅子から腰を上げ、同じように伸びをした。

「皆、ディスクを持って行くのを忘れずに」

「当たり前じゃない」

 他人のデータを盗むという事件が発生しているので、皆、データ管理にはピリピリしている。その事件とは、イリアのディスクが盗まれた事件のことであった。あの一件以来、生徒間の貸し借りは原則禁止。しかし貸し借りが必要な場合、余程の信頼がないとできなくなってしまった。

「で、何処に行く?」

「外の景色を見に」

「寒いわよ。やっぱり、暖かい建物の中でしょ」

「じゃあ、飲み物でも飲みながら休憩」

 休憩の方法に、全員が頷く。そしてディスクを取り出すと、それをそれぞれの荷物の中に仕舞い図書室から出て行く。最後に図書室から出たのは、イリアだった。そのことに、深い意味はない。

 たまたま、その順番になっただけ。しかし見る人が見れば、必然的に定められた順番に思えてしまう。人間は無意識に、順位を生み出す。それが故意に行われたことでないにしろ、深層心理が反映されてしまう。
結局は、全て同じ。

 たとえ、どのように取り繕うとも。


◇◆◇◆◇◆


「降りないのか?」

 車を停車したと同時にカディオが発した言葉は、このようなものであった。しかしソラは、車から降りようとはしない。ただ不機嫌な表情を浮かべ、カディオを睨み付けている。その表情に苦笑いを浮かべたカディオは「来てしまったものは仕方ない」と、ソラを説得する。

「今、講義中だぞ」

「おお! そうだった」

「知っていたな」

「勿論!」

「こ、こいつ」

「でも、外部からの訪問は自由だぞ」

「詳しいな」

 何処でそのような情報を得たのか、ソラは訝しげな表情を作る。在学中の生徒に知り合いがいるのかと思われたが、それは違うらしい。するとカディオは「知り合いの女性が在籍していた」と、説明しはじめる。

「別れた彼女か」

「うっ! 古傷が」

 その言葉にカディオは、過敏に反応を見せると視線を下に向けてしまう。どうやら触れてはいけない部分に触れてしまったらしく、痛みに身体を悶えはじめる。見慣れない変わった姿に「もっと傷つけ」という悪の心が芽生えたソラは、更に鋭い突っ込みを入れていく。


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