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第一章 異端の力
其の3

 よって仲間内からは「恋愛に消極的」と、思われていた。現に、ソラもこのことを話してもらうまでは、知らなかったらしい。そして話をしてもらった後、爆笑が響き渡ったという。

「でも、女っていいよな」

 たとえ何回ふられようとも、カディオの思考はこれしか考えられないようだ。この調子でいけば、いずれ縁ある女性と一緒になれるだろう。しかし、それがいつなのかはわからない。

 ――縁ある女性。

 縁というのは、何処かで繋がっているもの。恋愛を避けているソラにも、必ず相手は存在する。だが、求めなければそれが寄り添うことはない。相手を堂々と求められるカディオは、ある意味で羨ましい。

 もし、ソラが……いや、能力者(ラタトクス)自身がそれを行った場合、周囲から何を言われるか。故に、愛は語れない。

「俺は、尽くすぜ」

「うん。お前は、そのような感じだよ」

「だが、貢ぎはしない」

 一途というイメージがないカディオであるが、意外にそのような一面を持っている。もしカディオが好きだという女性と付き合うようになったら、相手は幸せ者だろう。暑苦しい部分もあるが、彼は優しい。

 しかし、それは女性限定。つまり、同性には厳しいのだ。しかしソラは、そのように思ったことはない。逆に、ソラが強すぎるのだ。良い友人関係の二人であるが、力関係は明確であった。

「で、気になったことがある」

「気にしなくていいぞ」

「何だよ、その返しは」

「いや、嫌な予感がして」

「それなら、言ってやる。オレに、アカデミーの場所を聞かなくてもよかったのではないかな。一度、行ったことがあったと思ったけどね。隠したって、無駄だよ。お前の行動は、把握済み」

 その言葉に、カディオは動揺を隠しきれずにいた。そう、カディオはイリアが通うアカデミーに行ったことがある。それは、今回と同じようにソラと一緒に。だから、聞く必要はない。

 それに迷子になりたくないという理由で、車にはカーナビを設置している。これを使用すれば、好きな場所へ向かうことができた。そのことを思い出したソラは信号で止まった瞬間、カディオの横腹を殴っていた。不意の攻撃に、カディオは口を開け間抜けな表情を作る。

「な、何をする」

「イリアの真似」

 そのように言われると、カディオは反論できない。痛む横腹を撫でつつ、ソラを一瞥。そして、幼馴染との微妙な関係に同情する。異性同士の幼馴染関係。そこから恋愛感情に発展するのではないかと思われるが、ソラとイリアにはそれは見られない。寧ろ、存在しない。

 そのことを不思議に思っていたカディオであったが、その理由を何となくわかったような気がした。それは、ソラが嫌がっている。確かにこのようなことをされているのなら、恋愛感情は湧かない。

 もしこれで相手に恋心を抱くようだったら、その人物は打たれ好きということになってしまう。生憎、ソラもカディオもそのようなことは嫌いだ。寧ろ好きだという人の方が珍しい。

 友人関係とはいえ、カディオは他人。その人に幼馴染の性格を暴露することは、常識的に言って失礼な行為。しかし、ソラは躊躇うことはない。つまり、それだけイリアの性格に困っているのだ。

「帰ろうか……」

「そうしてくれると、嬉しいな」

「マジ?」


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あきゅろす。
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